余命僅かな君との最期の日々

 そして、旅行の後半、俺たちはスコットランドに向かった。
 イギリスは元来イングランドと、スコットランドなどの国で分かれていた。

 つまり文化レベルの差がある。イングランドでの旅行とは違う雰囲気を楽しめる。
 聞いていた話によると、自然が美しいらしい。クラスゴーや、ネス湖といったような場所だ。
 ナショナルトラストという団体がそれを維持しているらしい。
 だが、まずはだ。

 早速、俺たちはスコットランドの首都であるエディンバラへと向かう。
 エディンバラ城、それは一目見ただけで、異世界に来たみたいな気持ちになる。
 壮大な自然の中に佇むその城はイギリスという雰囲気を醸し出すと同時に、周りの景色もよくしている、そんな感じがした。

 「なんか、すごいイギリスって感じがするね」

 その景色を見て鈴奈が呟く。

 「全部日本とは違うね」
 「まあ、文化的に違うんじゃないか?」
 「ふーん」


 鈴奈はそう言って周りを見渡す。


 「街並みも不思議な感じ。イングランドとは違う気がする」
 「そりゃな」

 元々違う国だったらしいし。

 そして場内に入ると、まさにそんな感じがするような内部だった。
 まさにイギリスの、スコットランドの文化を体験しているような気持ちになった。
 そして、次はグラスゴーに向かう。こちらは広大な事前が美しく、しかもその自然も日本が良しとする美とも少し雰囲気が違うく、文化を楽しめた。
 てか、さっきから鈴奈は「すごい」「やばい」「美しすぎる」と言った簡単な感嘆詩しか使ってない気がする。
 こいつさては、語彙力がないな。
 そう思いその旨を鈴奈に聞くと、

 「だって、私余命宣告されてるもん。語彙力も無くなるよ」

 いや、そういう物なのか?
 絶対に違うな。

 さて、

 そしてそのあともネス湖、セブンシスターズなどの沢山の観光地を訪れ、あっという間に帰国日となった。

 「いよいよこの旅行も終わりかあ」

 そう、名残惜しそうに言う鈴奈。
 もう帰るという事実を認めたくないようだった。
 俺は流石にもう疲れたから帰りたいんだがな。
 勿論イギリスが嫌なわけじゃなく、本当に疲れたのだ。

 「フランスとかも少し行きたかったなあ」
 「まだ望むのかよ」

 勿論この旅行自体十日間に渡る旅だ。十分沢山の場所を巡った。
 だが、俺が思うそれと、鈴奈が思うそれとは違うのだろう。

 「私にとって最後の旅行だからね」
 「だな、だが、飛行機の時間の都合上、俺たちはもう帰らなきゃならないからな」
 「そうだよね。あーあ、死にたくないなあ」
 「……」

 気まずい。

 「嘘嘘、そんな死にたいなんて当たり前のことだけどね、私やっぱりもっと浩二君と一緒にいたいよ」

 そう泣きながら言う、鈴奈。
 それを見ると少し俺まで悲しくなる。だが、そんな気持ちを打ち払うように、

 「俺の事が好きという事か?」

 俺はそう言った。

 「うーん、そうかも」
 「おい。ならキスするか?」
 「いいよ」

 冗談だよな?

 「おいおい、少し落ち着けよ」
 「落ち着いてるよ。その上で揶揄ってるのよ」
 「おう、そうか」
 「でも、本当に浩二君なら私のファーストキスを奪われてもいいと思ってる。それに、初キスがイギリスでというのもいいものだしね」
 「そうか。それは冗談だよな?」
 「ううん、ほんとっ!」

 そう言って鈴奈は俺の頬にキスをした。

 「おい!」
 「えへへ」

 全く、よくわからん奴だ。
 そして、俺たちは飛行機に乗る。
 だが、そのさなか、俺たちは互いの顔を見ることが出来なかった。
 キスされたというのに、顔が真っすぐ見れるわけがない。いくら頬へのキスとはいえ。

 「ねえ、浩二君」

 そんな中鈴奈が話しかけてくる。

 「どうした?」

 鈴奈の声にも色気を感じる。
 ああ、この前の海の時よりもはるかに意識してしまっている。

 「私も、浩二君のことが好きだよ」
 「……そうか」

 ん?

 「私ね、旅行にもついてきてくれたじゃん。私が望むところに全部に付いてきてくれたじゃん。私、だいぶ恐怖を押し込めるために面倒くさい女ムーブしてたと思うよ。でも、そんな私を見捨てないでくれた」
 「……鈴奈」
 「だからね、私が死ぬまでこの関係を続けてくれる? これは完全なる私の我儘なんだけどね」

 そう言っててへと笑う鈴奈。そんな彼女に対しての答えなど分かり切っている。

 「当たり前だ。お前が死ぬまで付き合ってやるよ」
 「死んだあとは?」
 「勿論死んだ後もだよ。恥ずかしいこと言わせるなよ」
 「ふふ、なら良かった」

 そして、俺たちは気を取り直して、アニメを見る。





 「日本、着いちゃったね」

 そう、悲しげに言う鈴奈。

 「そうだな。だけど、これからも一緒に遊ばないか?」
 「うん、明日からも一緒に遊ぼ!!!」
 「そうだな。でも次は相原さんも呼ぼうぜ」
 「え? 浩二君、あの子のことが好きなの?」
 「いがうよ。ただ、俺だけが鈴奈を独占してていいのかなって」
 「いいに決まってるよ。あ、でも一緒に遊びたいって恵美ちゃんも言ってた」

 鈴奈がスマホの画面を見せてくる。そこにあったのは花火大会のWEBSITEだ。

 「じゃあ、次はそこ行くか」
 「だねっ! 人生最後の花火大会かあ、楽しみだね!」