(SIDE愛香)
「あ……いか?」
どうしよう。会わす顔がない。私のお父さんのせいでこんなことになってるのに、そもそも私にはここにいる資格なんてないのに。
「私帰ります」
そう言って教室から出ようとした。会えるわけがない。
「ちょっと愛香! 待って!!」
私の逃走は、鳩さんの手によって、あっさりと止められてしまった。
「愛香……」
「茂……くん」
どうしよう気まずすぎる。帰りたい。もう、しんどいや。
「とりあえず、二人ともハグして」
「は?」
「え?」
ハグして? って、え!?
「ほら!」
仕方がないので、言われるままにハグをする。これして何かあるの?
「とりあえずさ、二人とも互いのこと好きなんでしょ? 鈴村竜介とかいうくそ野郎は置いといてハグしちゃってよ。もしここでハグしないと本当に疎遠になっちゃうかもよ?」
「う、うん」
気まずいままハグをする。
「茂……ごめん。あの父親のせいで、私のせいで」
「お前のせいなわけあるか!! お前は……お前は被害者だ。俺の方こそ、あの日以来会いに行かなくてごめん」
「でも、それを言ったら私じゃあ」
「でも、お前は、学校に行きたくなかったのは事実だ。行けるわけがない。ただ、俺はそんなお前を、お前を慰められなかった。彼氏失格だ」
「そんなこと言ったら私も彼女失格だよ」
「大好きだ、愛香」
「大好き、茂」
そして、私たちのハグを終えた瞬間に、咳込みをしながら先生が入ってきた。今は四〇分、思うに待っていたのだろう。その日は久しぶりの学校で鳩さんと茂と沢山喋って沢山笑った。
これからまた楽しい日々が始まるのかな、と思った。



