そして、夏休みが始まった。
 そしてすぐに私は早速茂に誘われた。場所は市内一の動物園。
 もうお父さんは金で買収されているし、お母さんは私の成績にご満悦なので、文句はもちろん言われない。

 茂君はどうやら私が結構動物のことが好きだということを知っているらしかった。カラオケデートを除けば初めてのデートと言う形となる。


 うぅ緊張する。相手がいくら茂とは言っても緊張しないわけがない。動物園デートなんて、まるで恋人みたいじゃん。……私たち恋人だけど。
 本当に緊張しすぎて、三〇分前に来てしまった。こんなに早く来ても何もすることがないというのに。とりあえずすることがないので、そこら辺をウロチョロとする。
 今の私の姿はまるで不審者のようだ。私が見てもそう思う。
 そして一五分後、「お待たせ」と言って、茂が来た。そして、「ごめん、待った?」と訊いてきた。

 私は即座に「ううん」と返した。私が緊張して早く来ただけだ。茂は何も悪くない。

 そして早速茂と手を繫ぎながら歩き出す。

「わああ。レッサーパンダかわいい!!!」

 私はレッサーパンダを見た瞬間にそう叫んだ。思えば、動物なんてネットでしか見たことがない。
 勿論それは犬等を除いて、だけど。

 動く、リアルな動物。
 私の心を癒してくれる。そんな私に対して茂は「良かったな」と言ってくれた。

「茂も見てよ。この愛らしい姿を」
「ああ、確かにかわいいな」
「でしょ?」
「あ! 茂とレッサーパンダ一緒に撮ってあげる!」

 そう言って、カメラを構える。すると、茂は満面の笑みで応えてくれた。

「どうだ? いい感じに撮れたか?」
「うん! もちろん」

 この写真は永久保存だな、と私は思った。
 レッサーパンダと言う超絶可愛い生き物と、茂という完璧人間が揃った写真。こんな宝物はない。
 そして次の場所に行くと、またかわいい生き物がいた。それを見ると、私はこんなにも動物が好きなんだな、と感じた。レッサーパンダ―だけじゃない。この世にはこんなにもかわいい動物たちがいる。そう考えたら、もう人生損してたなと、感じた。

 そして次のエリアに行くと、ぞうがいた。今度は可愛いと言う感情ではなく、シンプルに大きいという感想だ。
 ドスンという感じがして、大きい。
 こんな生物が確かに今生きているんだ、と感じる。
 茂もそんな私をニコニコと楽しそうに見てた。
 もしかして私、テンション高すぎた?


 そう思い、茂に「私……暴走してた?」と、訊く。すると、「全然、これくらいの方が見てて楽しい」と返ってきた。うん、ならいっか。

 そして私たちはどんどんといろんな動物を見た。いろんな、様々なかわいらしい動物たち、かっこいい動物たちを。
 そして一時になったので、イートインコーナーで食事をとる。

「茂」
「ん?」
「楽しいね」
「ああ、だな」
「茂はどんな動物が好きだった?」
「俺はやっぱり、ライオンだな。遠めでも迫力が伝わってきてて最高だった」
「なんか、やっぱり男子って感じがするね」

 かっこいい動物が好きなのって。私は反対にかわいい動物が好きだ。レッサーパンダ、パンダ、コアラたくさんのかわいい動物が好きだ。
 ライオンとかも結局かっこいいという感想ではなく、可愛いと言う感想になってしまった。

 茂とご飯を食べながらたくさんの話をする今の時間が好きだ。そして、食事をとった後、いろいろな場所を茂と一緒に回った。

「なあ、愛香。一つしたいことがあるんだけど」
「……何?」
「ここで抱き着きたい」
「え?」

 周りの目があるここで?

「だめだったらいい。でも、俺は動物を見ているお前を愛しく感じてきた。そうだ人がいるから嫌なんだったら、人のいないところ行くか」
「いや、ここでいいよ」
「そうか、なら」

 と、彼に抱き着かれた。周りの人に見られているのを感じ少し顔が紅潮した。
 だけど、今は茂と一緒にいれているという事実だけでうれしく感じる。
 茂と一緒にハグできているという事実が私を幸せにさせる。
 そしてその後は、軽く意識し合いながら動物を見て、帰った。

 正直午後の事はほとんど覚えていない。恥ずかしくて茂の顔もまともに見れなかったのだから。



 恋人らしい事かあ。
 ベッドの上で考えていた。私には恋人らしいことはよくわからなった。でも、今日の恋人らしいこと、公衆の場所でのハグは正直恥ずかしかったけど、カップルと言う感じがしてよかった。恋人つなぎをしながら歩いたのも、全てが楽しかった。デート、デート、デート、その言葉が私の中を埋め尽くす。ああ、楽しいな。

 明日もまた茂とデートしたい。私の中の欲望がたくさん出ている。一緒に映画を見に行きたい、一緒に自転車に乗りたい、一緒に海に行きたい、一緒に山登りしたい、一緒に……一緒に……。もう、したいことが多すぎて困ってしまう。

 そう思いながらベッドに寝ころんだ。
 そう、その時まで私は思っていたのだ。私は、この幸せが続くものだと。