絶望の果てに君に出会えた

 
 「命を粗末に扱うんじゃねえ!」

 彼にそう怒鳴られた。

 その言葉にムカッとした。

 「何も知らないくせに!!!!」

 私は彼に向かって大声で怒鳴った。
 
 この苦労を、この暗い人生を、何も知らないくせに! 他人の生殺与奪の件を奪いやがって。
 確かにこの世界は自殺を止めることで称賛されがちだ。だけど、これは違う。
 一時の気の迷いでもないし、一瞬で解決する問題でもない。
 そんな思いで、彼を睨むと。

 「そんな怖い顔すんなよ。せっかくの美人な顔が勿体無いぜ」
 
 美人な顔? こんな口論してる時に言う言葉か? いや、どうせお世辞に決まっている。
 私はこういう男が嫌いなの。
 他人に可愛い、かっこいい、そんなことを言えば好かれると思ってそうな男が。

 実際彼、山村茂君は友達の女子に「今日も可愛いね」とか言ってる所を何回も聞いたことがある。

 でも、どうせ可愛いとでも言ったら自殺をやめてくれると思ってくれてるんだろう。

 そんな安っぽい考え嫌いだ。
 私はまた安全柵を超えようとする。
 だが、再び山村君に止められる。

 「なんで! なんで止めるのよ! 死なせてよ!」
 「それはダメだ。お前高校生一人育てるのにいくらかかると思うんだ? 数千万円単位のお金がかかるぞ」
 「それが何? だからって生きなきゃだめってしんどいだけじゃん。命の大切さを説かないでよ!」
 「だから……その命を俺にくれ! 自殺によって失われかけたその命を!」
 「は?」

 全く意味が分からない。それだけの価値があるから俺にくれとはいったい……。

 「言い方が悪かったな。俺とこのあと一緒に来てくれ」
 「ええ!?」
 「頼む」

 その真剣そうな顔を見て断れるほど私は出来てはいない。
 こういう時に私はTHE日本人だなって思う。
 頼まれたら強く突っぱねられない。
 これが私の弱点だ。

 
 そしてそのままカフェに来た、来てしまった。

 「愛香、何が欲しい? 奢ってあげるよ」
 「なんでも良いけど……良いの? ここ高くない?」

 カフェラテが一つ650円と書いてある。
 カフェとかなんてあまり行ったことがない私には、これだけで体がすくんでしまう。
 650円なんてあれば夜ご飯なんて余裕で作れてしまう。

 そう考えると恐ろしく高い金額だ。

 「大丈夫。俺の親医者だから」

 そう言って彼は私に笑いかけた。なんでよ、私の親も医者が良かった。お金持ちだったら家だってこんな険悪な空気にならなかったんだ。

 「頼まないの? なら俺が適当に愛香の分まで頼んであげるから」
 「ああ、もう! 私が頼むよ」

 彼といるとなんかおかしくなっちゃう!

 「カフェラテで」