2025-08-12
『虹が綺麗ですね』

待ちに待ったデート当日。
大雨で気分が下がるけど。

君からの「おはよう」という連絡だけで
下がった気分もじわじわと上がってゆく。

やはり好きという気持ちは強い。
自然にも勝ててしまうのだから。

駅での待ち合わせだった。
君はもう先に佇んでいて。

私の姿を見るや否や
可愛いと褒めてくる。

新調した洋服が雨に濡れてしまうのは
あまり嬉しいことではないのだけれど。

君が褒めてくれるだけで
気にならなくなっていた。

雨が降っているということもあり
屋内で遊ぼうということになった。

私が君に似合う洋服を見つけ
君が私に似合う洋服を見つけ
お互いが渡し合うという流れ。

君はいつ買ってくれていたのだろう。
「これもあげる」と渡されたリング。

「ほら」と君は自慢気に見せる。
「お揃い」と言わんばかりの顔。

「ありがとう」と言い
「お揃いだね」と笑う。

同じリングを身に着けて
屋内のデートを楽しんだ。

幸せだと思う時間は一瞬で過ぎ去り
帰らなければならない時間となった。

いつだろうか、雨はやんでいた。
君と駅まで向かうだけなのだが。

君の指に着いているリングを見るだけで
心の中はお祭り状態のように盛り上がる。

ふと、君の足が止まったから
私も同じように足を止めると。

目の前には大きな虹がかかっていた。
大雨によって虹ができたのだろうか。

「虹が綺麗ですね」と君が言う。
「なんで敬語なの」と私は問う。

後で調べてみるといいよ、と君が言う。
なにそれ、と言ったけれど気にはせず。

駅に着き、君の乗る電車が出発をした。
窓越しに手を振る君に手を振り返す私。

「今日はありがとう」と連絡が来る。
「こちらこそありがとう」と返した。

ふと、さっき言われた台詞を思い出した。
「虹が綺麗ですね」とは何だったのかと。

調べてみると「あなたと繋がっていたい」だと。
このリングにも思いが込められている気がした。

遠回しではあるけれど
告白されたのだと知り。

「虹が綺麗ですね」と君に送った。

--