2025-08-13
『会いたいと思う頃』

会いたいと思う頃にはもう
会えない存在へとなるから。

会いたいと思わなくても
会っておくべきなのだと。

喧嘩をしてしまったが故に
会うことを拒絶していたが。

会っていない間に彼は事故に遭い
そのままあの世へと行ってしまい。

謝っておけばよかった、という思いが
どれだけ大きくなろうとも意味がなく。

彼の母親からこんなことを聞いた。

「息子はね、あなたのことを好いていたのよ」
「毎日のようにあなたのことを話していてね」

彼は毎日のように私を思っていた。
私は会うことを断ったというのに。

「何を送れば許してくれるのだろう」
「どう謝れば許してくれるのだろう」
「息子は色々と相談してくれてたの」

母親に相談してしまうほど
彼は悩んでいたのだと知り。

ごめん、と言葉が溢れた。
それと同時に涙も溢れた。

「私はね、会いに行って謝ってみれば?」
「そう言ったのが間違いだったんだけど」

彼は母親の意見を聞き入れ
会いに来ようとしていたが。

「会いに行く途中に事故に遭ったの」
「私が会いに行ってと言わなければ」

いつ事故に遭うかだなんて分からない。
母親は息子の悩みを聞いてあげていた。

悪いことではないのにずっと
ごめんなさい、ごめんなさい
彼の母親は目の前で呟くから。

「お母さんは何も悪いことはしていないです」
「私が彼と会うことを断ったのが悪いんです」

そう言うと彼の母親は泣き始め
哀愁漂う母親を見て私も泣いた。

会わないという選択がここまで
最悪な結果を招いてしまうとは。

誰しもがしがちな選択の行方は
バッドエンドなのかもしれない。

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