2025-08-22
『思い出』

忘れたくないと思っていたけれど
そんなに強く思う必要はなかった。

あなたが座っていた場所を見れば
すぐにあなたを思い出してしまう。

あなたが聴いていた音楽を聴けば
すぐにあなたを思い出してしまう。

忘れたくないと思ったものほど
すぐに忘れてしまう結末を迎え。

1つ1つに思い出みたいなものがあれば
必然的にその頃を思い出してしまうから。

もっとあなたに触れておけばよかった。
もっとあなたと話しておけばよかった。

どれだけ思い出が積み重なろうとも
あなたの発するものだけは薄れゆく。

どのくらい温かい人だっただろう。
どのくらい声が低かったのだろう。

思い出に触れればあの頃が蘇るのに
あの頃のあなたはもう蘇ることなく。

写真や動画を撮っておくべきだった。
あなたがどれだけ嫌がったとしても。

その頃のあなたはもう、どこにもいない。
その頃の私だってもう、どこにもいない。

唯一、一緒に撮った写真を飾っている。
今から20年前のことなのだけれども。

写真を見るたびに当時のことを思い出す。
あなたから積極的に誘ってくれたことを。

あなたの発するものがどれだけ薄れようと
あなたが抱いていた愛情は薄れそうもない。

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