言の葉の空

2025-08-25
『勘違い恋愛』

「好きなタイプは?」と聞かれた。
「君みたいな人かな」と答えると。

「なに言ってんの」と言うけれど
君の顔は次第に赤らんでゆくから
きっと私のことを好きなのだろう。

言葉にはしないけれど
表情で分かる人だった。

私が少し辛そうにしていると
心配そうな表情をしているし。

私が楽しそうにしていると
楽しそうな表情をしている。

言葉にしない人は嫌いだったけれども
この人に関してはどこか好きになれた。

そんなある日の出来事。
冒頭の言葉を言われた。

少し前にこんな記事を見たことがあった。
好きなタイプを聞く時点で好きなんだと。

きっと君は告白をできないだろうから
こちらから好意を向けてみようと思い。

「君みたいな人かな」と答えてみた。
相変わらず、表情で全て読み取れる。

私からも「好きなタイプは?」と聞いた。
君は「短い髪の子が好きだな」と答える。

つい先日、髪を切ったばかりだった。

私は「他にどんなタイプがある?」と聞いた。
君は「目を見て話す人が好きだな」と答える。

今までずっと、目を見て話していた。

私なんじゃないか、と期待。
私以外ありえない、と願望。

「それって私のことじゃないの?」と聞いた。
言葉にしない君に「うん」と言ってほしくて。

けれど、結末は少し捻じれていた。
どうやら私のことを好きではなく。

私の親友のことを好きなのだと言った。
確かに、同じ日に髪を切りに行ったし。

親友は誰に対しても優しく
目を見て話すタイプだった。

期待した自分がバカらしく思えてきて
不意に溢れそうになった涙を隠すため
君を押しのけてお手洗いへと向かった。

私が少し辛そうにしていたからではなく
隣にいた親友が少し辛そうにしてたから。

私が楽しそうにしていたからではなく
隣にいた親友が楽しそうにしてたから。

君の表情が変わっていただけ。
全て私の勘違いなのだと知り。

今更ながらに恥ずかしくなった。
何が「君みたいな人かな」だよ。

そんな自己嫌悪に陥っている最中
入り口のドアが開く音が聞こえた。

「〇〇~。どうして泣いてるの」
「たまたま見かけたんだけどさ」
「何かあったなら話を聞くよ~」

親友の声が聞こえてきた。
今、一番聞きたくない声。

トイレのドアを隔てて
向かい合う、親友と私。

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