2025-08-31
『初恋』

「8月31日って何の日か知ってる?」
君が嬉しそうな表情で僕に聞いてくる。

「何だろう、分からないな」と僕が言うと
「I Love Youの日なんだよ」と君が言った。

夏休みが始まる前に付き合ったばかりだった。
まだ初々しさを残した恋と愛とその他のもの。

君は言葉にするのが苦手そうだったけれど
比喩表現みたく伝えるのは好きそうだった。

告白をするときも言葉にすることができず
「付き合おう」と言えない君のことだから
「ずっと一緒にいたいな」と言ってくれた。

だから僕はその言葉を借りるように
「付き合ったら一緒だね」と言った。

僕のその言葉を聞いたときの君の表情が
パッと明るくなったような気がしたから。

この人を守らなければ、と思った。
この人を愛さなければ、と思った。

まだ1ヶ月ほどしか付き合っていないというのに
長く付き合い続けているカップルのようで嬉しい。

「8月31日、いい日だね」と僕が言うと
「来年も一緒にいようね」と君が言うから。

来年の約束をしてしまうほどに
僕らは信頼しきっているのかと。

少しばかり、嬉しい。
いや、物凄く嬉しい。

「明日から学校だね」と君が言ってくるから
「面倒くさいね」と僕が答えてみるけれども。

「でも学校で会えるし、幸せだ」と君が言う。
その横顔が途轍もなく愛おしくて胸が苦しい。

これが恋心なのだと知った。
苦しいけど嫌ではない痛み。

。。。

9月1日、学校に行くのが楽しみで仕方なかった。
同じクラスだからきっとすぐに会えてしまうのは。

ワクワクが足りないような気がした。
気がしただけ、気がしただけだった。

まだ蝉の声が鳴り響く窓辺に佇んでいる
君の姿が見えただけで、夏を思い出した。

--