2025-09-02
『母という月、息子という星』

ママに探してもらいたいと思い
ショッピングモール内で隠れた。

いつも友達とかくれんぼをしているとき
友達は笑顔で僕を探してくれるから多分。

ママも笑顔で探してくれるだろうと期待。
いつも疲れ切った表情だから今日くらい。

ママに笑ってほしいと思い
自分なりに行動したけれど。

ママは僕を見つけるや否や
鬼の形相で怒ってくるから。

「ごめんなさい」と謝った。
「もうしないで」と言われ。

「笑ってほしかっただけ」という本音は
小さい心の中にしまい込んだままにした。

友達とかくれんぼをしなくなるほどに
成長しきった夏の暑い日のことだった。

もう１人でショッピングモール内で
買い物をできるほどには大人びたが
未だゲームセンターに寄りたくなる。

こちらからはお尻しか見えていないが
きっと顔を出して隠れた子供が見えた。

まるで過去の自分が母親から隠れたとき
母親が探しに来るのを待っているような。

見つかったときに笑ってくれるだろう、と
小さい体ながらも期待しているのだと思う。

過去の自分と似た子供が愛おしくて
椅子に座ってその光景を眺めていた。

５分くらい経っただろうか。
まだ見つけに来てくれない。

子供は疲れ切ったようでその場に座り
まだかまだかと親のことを待っている。

３０分ほど経っただろうか。
まだ見つけに来てくれない。

見つけに来てくれないというよりも
見つける気がないように感じ始める。

流石に痺れを切らし
子供に話しかけると。

「絶対来てくれるもん」と言い
「あっち行ってて」と言われた。

きっと僕がその場にいたら
見つかってしまうからだと
子供は思ったのだろうけど。

見つけてもらえないんだよ、とは
純粋な子供に対して言えなかった。

あのとき母親が僕を見つけてくれ
鬼の形相で僕を怒ったのはきっと。

愛してくれているからなのだと気付く。
あのときはまだ幼くて気付けなかった。

僕はゲームセンターの店員さんに
「ずっとここにいますよ」と告げ
子供の存在を伝えてから家へ帰る。

あの子供の親は何をしていたのだろう。
あんなにも親を愛しているというのに。

玄関を開け「ただいま」と言った。
奥から「おかえり」と声が聞こえ。

その流れのまま、今日あったことを話した。
母親の目はずっと子供を見る目をしている。

まるでさっき僕が子供を見ていたときのよう。
親からすればずっと子供のままなのだろうか。

あの子供も愛されていてほしい、と願う。

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