2025-09-22
『妖精の微笑み』

「愛してるよ」と言って消えた妖精。
まるで1年前に亡くなった妻の様な。

一瞬の出来事で理解が追い付かない。
目覚めてから刹那の出会いに戸惑う。

「待って」という僕の声も虚しく
妖精は微かな輝きを残して消えた。

思えば2年ほど前と同じ状況だった。
大きなベッドに妻と寝ていた頃の話。

目が覚めると妻は僕のことを見ていて
「おはよう」と言った僕に対して妻は。

目尻に皺ができてしまっても構わずに
「愛してるよ」と微笑みかけてくれた。

その微笑みには忘れられぬ輝きがあり
今でも目が覚めると思い出してしまう。

妻と寝ていた頃は丁度良かったベッドも
1人になってしまえば寂しいくらい広い。

ベッドから立ち上がって仏間へと行き
ポツンと置かれている妻の遺影を見る。

嗚呼、さっきの妖精は妻ではなかったんだ。
妻の遺影の横に置いている娘の遺影を見る。

まだ幼かった娘が笑顔で写されている。
まるでさっき見た妖精の輝きみたいな。

親にとって子供の笑顔は救いとなる。
娘はきっと妖精になって会いに来た。

そして現実に失望している僕に対し
微笑みかけて励ましてくれたんだと。

泣いた、愛されてると知って。

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