2025-09-09
『針のズレた時計』

「好きです、付き合ってください」
真っ直ぐな告白を受け止めきれず。

「ごめんね、友達のままがいい」
告白を断ってしまったけれども。

翌日も君は相変わらず挨拶をしてくれて
告白を振られたことを気にしてなさそう。

告白をされたこと自体が
無かったかのように思う。

告白をされる前は本当に好きとかではなく
友達として居心地の良い関係だったけれど。

告白をされたことで意識し始めるようになり
君と話すときも視線が一瞬だけ逸れてしまう。

それから1ヶ月と2ヶ月と過ぎていく中で
君のことを「好きだな」と思うようになり。

今度は私から告白をしようと心に決めた。

放課後、誰もいない教室で君と私。
「好きです、付き合ってください」

君は困ったような表情を隠せないまま。
「ごめんね、友達のままがいいな」と。

結局は好きになるタイミングが問題だった。
時計の針が僅かにズレているみたいな感じ。

きっと君からの告白をあのときに受け入れていれば
今の私たちは笑顔で付き合っているのだろうけれど。

教室には気まずさが漂っている。
君は「ごめん」と教室を後にし。

教室の外で待っていたであろう友達と合流をし
どこかへ行く君の声だけが私の耳に届いていた。

「もう遅いよ」

それが君の声だったのか私の声だったのか
分からないまま翌日を迎えることになった。

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