2025-09-10
『奪い愛』
死んだ、大切な親友がやっと。
深いダムに飛び降りたのだと
親友に彼氏を奪われてから私
毎日のように恨み続けていた。
出会いは幼稚園の頃だった。
もう記憶は曖昧だけれども。
小学校も中学校も一緒に通い
高校までも揃って通っていた。
親友は中学生の頃から何かと
私から奪ってばかりいたから。
漸く天罰が下ったのだと思う。
ありがとうございます、神様。
「好きな人誰なの?」と聞かれたとき
素直に「〇〇君だよ」と答えてみると。
次の日には親友と好きな人が付き合っていた。
私と目が合うや否や「おはよう」と手を振る。
気まずさを隠せそうもなく私は
「おはよう」と手を振り返すが
親友の気取った顔が忘れられず。
いつか見返してやろうと思っていた。
私は県外の大学へと進学することにし
親友と少し距離を置いて過ごしていた。
この頃にはもう、地元で出会った男性と
私は遠距離恋愛をしていたのだけれども。
どこかで話を聞きつけた親友がいつの間にか
私の彼氏とデートをするほどに親密になった。
それを知ったのは私が地元へ帰ったときだった。
親友から「見て~」と1枚の写真を見せられる。
居酒屋は賑わっていて
他の客の声が煩いのに。
写真に写る親友と彼氏を見たとき
また奪われたか、と悲しくなった。
と同時にこれまでの過去が蘇り
親友に対して怒りを抱いていた。
「居酒屋煩いから、ドライブしよ」と言う。
親友は「いいね、行こうか」と返してくる。
よかった、私はお酒が飲めなくて。
酔っているわけではないから別に
運転をしようとも捕まりはしない。
隣には酔った親友を座らせて
学生時代のことを語り合った。
「私から色々と奪ってばかりいたね」
「君から何も奪ってないというのに」
酔った親友は私の話を聞かないで
すやすやと夢の中で彷徨っている。
「彼氏を奪われてさ、悲しかった」
「もう親友として関わりたくない」
ふと私は本音が漏れてしまう。
けれど寝ているし気付かれず。
「着いたよ、結構深いダムだね」
私は寝ている親友を起こしたが。
目をこすってまだ眠そうな親友は
どこに連れてこられたのか知らず。
「見て見て、深いよ」と私は言った。
覗き込むようにダムの下を見ている。
すると親友はさっきまでとは違い
素早く動いて私をダムへと落とし。
きっと酔ってなかったのだろうと
私が悟る頃にはもう遅いけれども。
死まで数秒の猶予が残されている。
もう何もすることができないのに。
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『奪い愛』
死んだ、大切な親友がやっと。
深いダムに飛び降りたのだと
親友に彼氏を奪われてから私
毎日のように恨み続けていた。
出会いは幼稚園の頃だった。
もう記憶は曖昧だけれども。
小学校も中学校も一緒に通い
高校までも揃って通っていた。
親友は中学生の頃から何かと
私から奪ってばかりいたから。
漸く天罰が下ったのだと思う。
ありがとうございます、神様。
「好きな人誰なの?」と聞かれたとき
素直に「〇〇君だよ」と答えてみると。
次の日には親友と好きな人が付き合っていた。
私と目が合うや否や「おはよう」と手を振る。
気まずさを隠せそうもなく私は
「おはよう」と手を振り返すが
親友の気取った顔が忘れられず。
いつか見返してやろうと思っていた。
私は県外の大学へと進学することにし
親友と少し距離を置いて過ごしていた。
この頃にはもう、地元で出会った男性と
私は遠距離恋愛をしていたのだけれども。
どこかで話を聞きつけた親友がいつの間にか
私の彼氏とデートをするほどに親密になった。
それを知ったのは私が地元へ帰ったときだった。
親友から「見て~」と1枚の写真を見せられる。
居酒屋は賑わっていて
他の客の声が煩いのに。
写真に写る親友と彼氏を見たとき
また奪われたか、と悲しくなった。
と同時にこれまでの過去が蘇り
親友に対して怒りを抱いていた。
「居酒屋煩いから、ドライブしよ」と言う。
親友は「いいね、行こうか」と返してくる。
よかった、私はお酒が飲めなくて。
酔っているわけではないから別に
運転をしようとも捕まりはしない。
隣には酔った親友を座らせて
学生時代のことを語り合った。
「私から色々と奪ってばかりいたね」
「君から何も奪ってないというのに」
酔った親友は私の話を聞かないで
すやすやと夢の中で彷徨っている。
「彼氏を奪われてさ、悲しかった」
「もう親友として関わりたくない」
ふと私は本音が漏れてしまう。
けれど寝ているし気付かれず。
「着いたよ、結構深いダムだね」
私は寝ている親友を起こしたが。
目をこすってまだ眠そうな親友は
どこに連れてこられたのか知らず。
「見て見て、深いよ」と私は言った。
覗き込むようにダムの下を見ている。
すると親友はさっきまでとは違い
素早く動いて私をダムへと落とし。
きっと酔ってなかったのだろうと
私が悟る頃にはもう遅いけれども。
死まで数秒の猶予が残されている。
もう何もすることができないのに。
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