言の葉の空

2025-09-13
『好き移し』

私が好きだと言った音楽を
君がいつの間にか聴いてる。

私が好きだと言った書籍を
君がいつの間にか読んでる。

きっと私が好きだと言わなければ
君はそれらに興味を示すことなく。

私が好きだと言ってみたから
君も好きになろうとしている。

まだ付き合って1ヶ月の恋人。
お互いのことを知りたくなり。

「君は何が好きなの?」と訊ねる。
「この人が好きだよ」と言われた。

私が恋人と出会っていなければ
知る由もなかった人を教えられ。

「特にどの曲がお薦め?」と聞くと
「花という曲がいいよ」と言われた。

聴いてみるといつも恋人が鼻歌で
歌っている音楽なのだと気付いた。

「これいつも君が歌ってるやつだ!」と言った。
「あはは好きだから歌っちゃう」と照れる恋人。

数日も経てば私もその音楽を
鼻歌で歌うようになっていた。

「その曲、好きになった?」と恋人に言われる。
「凄く好きになった!」と本音を伝えてみると。

「好きが移っていくみたいで嬉しい」と言われた。
「あはは確かに移っちゃったみたい」と笑い合う。

気付けば私の口癖も、君の好きな旋律も
区別がつかないほどに日常と化していた。

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