校舎を出るために長い廊下を歩いている私は、横を歩くヒューの顔を不思議そうに見た。

「そう? けど、誰かのことを、全部理解するなんて無理じゃない? だって、私今この瞬間だって、ヒューと話してて考えが変わったりするから」

 そうなんだよね。今の私は十年後の私と一緒ではないと、それは思う。

 色んな経験をして、私たちは変わっていくのだ。良いようにも悪いようにも。自分の思うとおりに。

「……うーん。なんて例えれば良いのか。そう……つまり、流れる川の水を見て、その規則性に思いを馳せているのが、僕は楽しいんだよ」

「ヒューって変わってるね」

 頭の良い人が考えることは、本当に良くわからない。

「その僕に変わってるって言われるんだから、君も相当変わってるよ」

 そして、私たちは二人で笑い合ってから、前を向くと靴箱の前で待っている人影を見て、私はその彼に抱きつくために走り出した。


Fin