遥かなる朱火と、ふたつの影

「狐火くん、この世界って…どこに人が住んでるの?」

ふとした疑問を口にした。目の前には緑が広がっていて、小川の音は心地いい。けれど、足音も声も、人の気配はまるでなかった。
狐火くんはふと空を見上げて、穏やかに言った。

「この辺りから少し歩いたところに、小さな村があるよ。よかったら案内しようか?」
「え、ほんとに!? ぜひお願い!くろ、みるく、行くよ」

自然と足が前に出ていた。どんな村だろう。どんな人たちが住んでいるんだろう。
足が勝手に前に進み、胸の奥がそわそわと高鳴った。

少し歩いたところに、淡い不思議な光が周りに舞っている木を見つけた。
どういう木なのかな。

「にゃ〜?にゃっにゃっ」
「みるく!おーい。まあすぐに飽きると思うし、ちょっと待つか」

みるくが動く光に釣られ、遊び出した。
狙いを定めて追いかけて、ジャンプして、一生懸命なみるくはちっちゃくて純粋な子猫に戻ったようでとても可愛い!

「みるく可愛いなぁ。そういえばあの木ってどういう木なの?」

狐火くんは、木の方向を見て目を細めながら言う。

「あの木はね、「幻灯」っていう木。幻のような灯火が舞ってるからそう名付けられたらし
「へぇー、そういう木なんだ」 

いつの間にかみるくは私の隣にいて、嬉しそうな顔だ。
何か獲れたのだろうか。

「みるく、なんか獲れたの?ってなにそれ!トカゲぇ⁈」

トカゲのような少し暗い黒がかかったスミレ色の生き物を咥えてきたのだ。
みるくはトカゲ?を、私の前に置くと見て見て!っと言わんばかりに「うみゃ」と鳴いた。その姿はまるで『見て見て!倒したよ!』と言っているようだったが、
私にはただのトカゲのようにしか見えなくて、よくわからない。
トカゲは瀕死のようだが時折ぬるりと動くのが背筋に嫌な寒気を走らせた。
これには私もビビってしまい、「うぎゃっ!」と叫んでしまった。
この声に狐火くんとくろも私の声に反応して振り返ると、見ると私と似たように驚いて

「ゥワオン⁈」
「え⁈なにこのトカゲ!こんな色のトカゲ、見たことない…」

と反応する。ただ一匹みるくだけがなんで驚いているのかわからないのか「な〜」と低い声で不思議そうに鳴く。
するとトカゲはぴくりと動かなくなり、身体の色が真っ黒になった。
狐火くんが深刻そうに呟く。

「ラグネヴの生き物だ。きっと死んだ後にラグネヴの力が使えるようになる特殊なタイプだ…」
「え、ラグネヴってなんか危険なやつ?」
「そうだよ。まあ、危険としか言えないけど…」

そんな会話をしているうちにみるくがトカゲから離れてトカゲに威嚇をする。
トカゲが禍々しいオーラを纏うと、トカゲの体が膨れ上がり、やがて人の姿へと変わっていった。
その姿はまさに、私たちのような‘人’だった。

「やア♪こんにちハ♪今かラトクベツな戦いをしましょうネ♪ラグネヴを使うんだかラ、覚悟しててヨ♪」

嘲笑うように語りかけてきた。

「朱音さんも戦える?」
「うーん、頑張ってみる!」

そう言いながらも内心怖かった。
異能もまだわからないし、戦ったことなんて一度もない。
でも、この先も戦うような気がしてずっと狐火くんに頼るのも申し訳ないし、
諦めるのが怖かったのもある。
だから頑張ってみよう。そう心に決めた

「おやァ、ワタシと戦うのを決めたようですネ♪オモチャだかラ壊さないように丁寧に扱わないとネェ♪」

元トカゲは、ニヤリと嘲笑い、笑いながら言った

「じゃあオモチャらにハトクベツに教えてあげよウ♪そこのオンナ、オマエの異能は式神を作り出す、ダ。俺優しいだロ♪」
「私の異能は…式神を作り出す⁈どうして知ってるの⁈」
「オット、これ以上は言えないナ♪じゃあ楽しもうカ」