なんて言い方をするのだ。たしかにいちとはつに相談はしたが、この時間に寝室を訪れると決めたのは自分だ。
カッとなって大きな声が出てしまう。朔太郎は何度か瞬きをすると、先ほどよりは冷静さを取り戻した声で美鈴に問いかけた。
「じゃあどうしたんだ。なにか用事でもあったのか」
「わたし、統領さまのことをもっと知りたいのです」
「知りたい?」
「はい。統領さまはわたしのことをとても気にかけてくださいます。ここに来てから、わたしはとても幸せです。でも、わたしは統領さまになにもできていないのではないかと思って……」
最後のほうはかすれて聞こえなかったかもしれない。
でも、これが美鈴の本心だった。
「いつも食事を作ってくれているじゃないか。助かっている」
「もっと統領さまのお役に立ちたいのです。あなたのこと、教えてくださいませんか」
すがるようにそう言う。
朔太郎は逡巡したのち、「入りなさい」とつぶやいた。
はじめて入る寝室は、白檀の香りがした。
香りのもとをたどると、香が炊かれているのが目に入る。案内されるがままに座布団に座り、くゆる煙をぼうっと眺めていると、朔太郎が口を開いた。
「知りたいというのは、私の話をすればいいのか」
「あ、はい……」
気持ちばかりが先行して、あまり具体的なことを考えていなかった。
香を嗅いでしばし気持ちが落ちついた美鈴は、恥ずかしくて顔が熱くなってくる。
「……迷子のきみを送り届けたあの日から、きみを見守っていたと言ったね」
「はい」
「最初は危なっかしい人間の子どもだと思って目が離せなかった。放っておいたら、悪いあやかしに攫われてしまいそうで、責任感からときどき様子を見にきていたんだ」
カッとなって大きな声が出てしまう。朔太郎は何度か瞬きをすると、先ほどよりは冷静さを取り戻した声で美鈴に問いかけた。
「じゃあどうしたんだ。なにか用事でもあったのか」
「わたし、統領さまのことをもっと知りたいのです」
「知りたい?」
「はい。統領さまはわたしのことをとても気にかけてくださいます。ここに来てから、わたしはとても幸せです。でも、わたしは統領さまになにもできていないのではないかと思って……」
最後のほうはかすれて聞こえなかったかもしれない。
でも、これが美鈴の本心だった。
「いつも食事を作ってくれているじゃないか。助かっている」
「もっと統領さまのお役に立ちたいのです。あなたのこと、教えてくださいませんか」
すがるようにそう言う。
朔太郎は逡巡したのち、「入りなさい」とつぶやいた。
はじめて入る寝室は、白檀の香りがした。
香りのもとをたどると、香が炊かれているのが目に入る。案内されるがままに座布団に座り、くゆる煙をぼうっと眺めていると、朔太郎が口を開いた。
「知りたいというのは、私の話をすればいいのか」
「あ、はい……」
気持ちばかりが先行して、あまり具体的なことを考えていなかった。
香を嗅いでしばし気持ちが落ちついた美鈴は、恥ずかしくて顔が熱くなってくる。
「……迷子のきみを送り届けたあの日から、きみを見守っていたと言ったね」
「はい」
「最初は危なっかしい人間の子どもだと思って目が離せなかった。放っておいたら、悪いあやかしに攫われてしまいそうで、責任感からときどき様子を見にきていたんだ」


