「あのね、こっちゃんね、おおきくなったらしゅんくんとけっこんする!」
四歳の頃だった。
お母さんの代わりにわたしを幼稚園に迎えに来た駿(しゅん)くんに、近所の公園で人生初のプロポーズをした。
中学二年、黒い学ランに身を包んだ十四歳の駿くんは、わたしに目線を合わせ、ふわっと笑って黄色い帽子を首から下げているわたしの頭を撫でた。
「嬉しいな。じゃあ、小晴が大人になったら結婚しようね」
声変わりした低い声しか知らないけど、もう骨っぽくなっている大きな手しか知らないけど。
わたしの頭頂部を包み込んでしまう大きな手で撫でてくれたあの温もりは、今でも忘れられない。
わたしは駿くんと結婚する。
それだけを夢見て、この十二年を生きてきた。