花咲 陽向、高校1年生。
いつものように音を立てないようにそっと起き上がる。
……今日は雨が降っている。
「はぁ……」
きっと今日も……

・ ・ ・

まずは洗面所で、いつもの”練習”をする。
「……にっこり」
うん、我ながらなかなかいい気がする。

……ふぅ
「…お母さん、おはよう」
いつもの笑顔、聞き取りやすい声色。
全て小さい頃に学んだものだ。
「……あら、おはよう」
お母さんは偏頭痛を持っているから、雨の日は機嫌が悪い。だから、いつもより慎重に、そう、分かっているはずだった、
「……あっ!」
…油断していた。まさか、皿を落としてしまうなんて
「……うるさいっ!何してるの!!」
「っ……」
「あんたはいつもそうやって迷惑ばかりかけて……!」
「あんたって子は!!」
「……ごめん、なさい」
「……はぁ、さっさと片付けて遅刻しないようにしなさい」
「…はい。」

・ ・ ・


…にこっ、といつも通り笑顔を貼り付けて。
「おはようー!」
「ひなた!おはよー!」
にこにこ元気で愛嬌のある百瀬 菜奈。
「ふわぁ……おはよぉ」
ふわふわとしていてかわいらしい白井 百合。
「もう、ゆめったら〜、もうそろそろ起きな〜?」
「んぅ……わかってるよぉ…」
「そういえばさー……」
「へぇ〜……あ、〜〜……」
「……ww」
……私がこの2人に不釣り合いなことくらいわかってる。
でも……
「ね、ひなたもそう思わない!?」
「ふふっ、そうだな〜……」
少しだけでいいから夢を見させて。