席替えしたら、どうやら後ろの男が俺のこと好きらしい

「じゃあ、この問題からやるか」
「へっ、あ、うん!」
 だめだ、ここは集中しないと。香りなんて思ってる場合じゃない。
「初項が五、末項四十一、公差が三の数列の合計を出せって言ってるんだけど」
「……うん?」
「簡単に言うと、五から始まって、三ずつ増えて、最後が四十一ってこと」
「な、なるほど」
 朝宮が問題集のページを指でトントンと叩きながら、ノートにさらさらと数式を書いていく。
 頭がいいのは知ってたけど、余裕で問題解いていくのもかっこいいよな。
 それに香りもそうだけど、朝宮の手って、なんでこんな綺麗なんだろう。爪の形まで整ってることあるか?
 そもそも勉強してるだけなのに色っぽいってなんだ。
「間山?」
「……ッ!」
「分かりにくかった? もう一回説明しようか」
 なに朝宮に見惚れてるんだ。馬鹿だ、最低だ、俺。
「ちがう……! そうじゃなくて、……俺が集中してなくて。本当ごめん」
 これじゃあ朝宮に申し訳なさすぎる。
「その……勉強してる朝宮が、かっこいいなって思ってしまって……朝宮が悪いってよりも、俺が全面的に悪い感じで」
 白状したほうがいいとは思ったけど、これだと呆れられるだけだ。
「……あぶな、学校でよかった」
「え?」
「ここじゃなかったら、ふつうに無理だったかも」
 なぜか朝宮は安堵している。
「朝宮?」
「間山、大丈夫だよ。俺も同じこと考えてたから」
 ペンを置いた朝宮の手が、そっと俺の指を撫でる。
「勉強する間山ってこんな可愛い顔してたんだなって」
「か、わいいって……アホが出てただけだと思うけど」
「それが可愛いって話。俺の話を一生懸命聞こうとして、それでも分からなさそうにしてる顔とか、反則だよなって」
「……それを言うなら、さっきの問題とか余裕で答え分かってる朝宮も、その……かっこよかったし」
「ほら、またそういうこと言う」
「朝宮だって――」
 そっと重なった唇に、言葉が呆気なく遮られた。
 目の前には、イタズラに成功したような顔で俺を愛おしそうに見つめる朝宮がいる。
「……反則だろ」
「可愛いことしか言わない間山を前にしたら、誰でもこうなるって」
 俺にとって、朝宮はいつだって余裕があるように見える。
 今だって、キスされてテンパったのは俺だけだ。
 だから、ほんの少しでもいいから、困らせたかった。
「じゃあ続き──」
 勉強を再開しようとした朝宮に、不意打ちで俺からキスをする。
 目の前にいるイケメンはぴたりと固まって、瞬きひとつしない。