席替えしたら、どうやら後ろの男が俺のこと好きらしい

「言っていいの?」
「え……」
「俺が間山にどんなことをしたいと考えているのか、全部言っていいなら――全部行動に移していいなら、どれだけでも言うよ。たとえば」
 小さな顎に触れた手。そこから親指だけを動かして、薄く整った形の唇をゆっくりとなぞる。
「ここ、噛みつきたいなとか。そのまま押し倒したいとか」
「噛み……、いや、ここ学校で」
「学校だから考えるんだよ。誰かに見られるかもしれないと思う間山を見てみたいし、そういうことでいちいち興奮したりするんだから」
 でも、と言葉を続ける。
「一度でもそういうことをしたら、多分理性ぶっ飛んで、間山に会うたびにぶつけると思うから」
「……それで、適切な距離?」
「そう、大事なこと」
 パッと手を離して、わざと軽く言ってみせる。今ならまだ、冗談も交えたような形で終わらせることができる。
 俺は間山を大切にしたい。
 俺が知っている愛情表現でいいなら、どれだけでも伝えたい。
「あの……」
「ん?」
「俺そういうの、まだよく分かんないけど……」
 ぎこちなく視線を泳がせる間山が、耳まで真っ赤になっている。
「でも、それは朝宮だけじゃないと思う」
 間山の言葉に、思わず喉が鳴った。
「俺も、朝宮とそういうこと、したいって……考えたりするから」
 間山が少しうつむいてそう呟いた瞬間、胸の奥で何かが弾ける音がした。
 少し乱れた前髪から覗く瞳。そこに俺を映し出したい。俺だけが見えるようにしたい。
 距離は、顔を少し傾けるだけで間山の唇に触れられる位置だ。
 なんとか冷静さを保とうとするものの、視線は自然と間山の唇に引き寄せられてしまう。言葉を重ねるほどにその距離は縮まり、本能を抑えきれなくなっている自分に気づいてしまう。
「……間山」
「うん?」
「俺、今めちゃくちゃ暴走しそうなんだけど」
 その言葉に、間山が一瞬固まる。
 その瞳が怯えたように揺れたかと思うと、次の瞬間には、意味を理解したように、こくんとうなずく。
 なんだ、今の。
 全部動画に残したかったぐらいには罪深い生き物でしかなかった。
 だめだよ、簡単にうなずいたら――と俺は声に出してちゃんと忠告してあげられたんだろうか。多分、声になるよりも、奪うように間山の唇にキスを落としたほうが先だ。
 柔らかくて、ふにっとしているくせに、離れたくないような熱を帯びている。