席替えしたら、どうやら後ろの男が俺のこと好きらしい

「あ、待った朝宮」
「ん?」
「ここだと、誰かに見つからないかな」
「何階だっけ、ここ」
「知らずにいたんだ」
 ふっと笑う間山は、さっきと比べたらかなり落ち着いたらしい。
「二階だよ。この位置なら窓からは見えないと思うけど、扉の窓からは見えるかも」
「あー……そっか。じゃあ、避難しよ」
 教室の中で死角になるような場所を探し出し、廊下側の真ん中の壁にふたり並んで座った。
「なんかこれ、いつもと変わらないね」
 間山がおかしそうに笑う。言われてみれば、俺たちの席ももう少し斜め先ではあるけれどこの辺りだ。
 タガが外れた俺は無敵で、間山の肩に頭をもたれては、それからぐりぐりとしてみたりする。間山は「甘えた朝宮だ」とけたけた楽しそうにしている。
 それに今は、間山と離れたくはない。
「朝宮、変なこと聞いていい?」
「変なこと?」
 間山が言いにくそうに視線を落とした。
「その……俺って、朝宮にとってどんな存在なのかなって」
「え」
「いや、ごめん。さっき地元の友達と話してるのを聞いちゃって。彼女いないって……」
 ダル絡みされたときのことを思いだす。間山に聞かれていたのか。
「ごめん。本当は付き合ってる奴いるって言おうと思ったけど、あいつら誰なのか突き止めようとするから。間山を見つけてほしくないと思ったっていうか」
「……じゃあ、俺と付き合ってるのが恥ずかしくて言わなかったってわけじゃないの?」
「え?」
 そんなことを言われるとは思わなくて、すぐに否定した。
「それはない。むしろ間山のことを自慢したいぐらい」
 だけどそれは間山にとって迷惑になることだろうから。それなら言わないほうがいいと思っただけで。
「どんな存在なのかって聞かれたら、俺がめちゃくちゃ好きになった人としか言えないかも」
「そ、それは……俺も、です」
 赤面するその顔に、ついキスをしそうになる。だめだ、適切な距離を保たないと。
「それで……これは適切な距離なんですかね」
 同じようなことを思っていたのか、間山が困ったように聞く。だから、ごく当たり前のように「適切です」と答えてみるが無理がある。
 すると間山は俺の頬を両手で包み込んだ。
「ずるい」
「え?」
 さっきまで笑っていたのに、今は少し怒っているようにも見える。
「俺が触ろうとしたときは避けたくせに」
「……それは、間山に触られたら暴走する自信しかなかったから」
「朝宮が暴走?」
「俺の頭の中をのぞいたら、間山はふつうにドン引きすると思う」
 あれやこれやと考えていることを知られたら、恋人関係は解消されるような気がする。だから脳内だけで我慢して、現実では間山を穢(けが)さないようにしようと努力した。
「どんなこと考えてんの?」
 そんな純粋無垢な恋人は、こてんと首をかしげる。
 ああ、だめだよ、そんな顔を俺の前で見せたら。
 自然と手が間山の顎先に伸びて、ぐいっと角度をあげた。俺の両頬を包んでいたその手が、かすかに離れる。