席替えしたら、どうやら後ろの男が俺のこと好きらしい

~朝宮side~
 間山が俺の恋人――その事実を毎日のように噛みしめていた。
 襲わないように、適切な距離を保つことで理性をコントロールしていた。それでも付き合ったという事実が間山を変えたのか、無意識な攻撃は、いちいち俺の思考を爆発させていた。
 後ろの席に座る間山を意識しないようにするだけでも精一杯なのに、一度振り返ってしまえば甘い顔で俺に気づく間山がいる。
 席替えをしてから、俺が間山にプリントを回すと、指と指が触れる。それだけで赤面しながらも、離れようとはしない。それどころか、間山から指を絡めてくるようになった。ちょん、と触れていたのが、どこか俺を求めるように触れてくるその指先に、じっと耐えることが息苦しい。
 もちろん喜ばしいことであり、こうなることを望んでいた。
 間山から触れてくれるだけで、俺たちは両想いなんだなって思うことができる。でも、問題はその先だ。
 間山は一体、どこまで覚悟してくれているのだろうか。
 俺と付き合うということを、男と付き合うということを、間山自身はどう受け止めているのか見えなかった。
 だからというわけではないけれど、俺がまだ自分で制御できるうちは必死に我慢するしかない。そうして出てきたのが“適切な距離”だ。正直自分の中でもどこまでがボーダーラインなのか分かってはいない。
 それでも暴走を防ぐためであり、間山を俺から守るために必要だと思った。
 それなのに間山が愛おし過ぎて冷静さを保っていられない。静かに自分を落ち着かせては、毎日、間山からの可愛い攻撃に耐える日々。
 たまに、俺の手をじっと見ているときがあるけど、もしかしたら手を繋ぎたいと思ってくれているのかもしれない。
 俺も繋ぎたい。でも繋いだら終わりだ。
 間山に触れられないのは残念だけど、今後のことを考えれば大事なことだ。これは仕方がない。間山と一緒にいられるならそれでいいと、本気で思っていたのに。
「朝宮!」
 地元の連中からダル絡みをされ、ただでさえない気力を根こそぎ持っていかれていたとき、常川田の声が聞こえた。
 校舎を見上げれば、慌てた顔をする常川田がいる。
「間山がやばい!」
「……は?」
 その瞬間、歩くだけでも面倒だった俺の身体は反射的に走り出していた。何が起こっているのか知らないが、間山に関わることなら急がない理由がない。
 常川田がいた階まで階段を駆け上がれば、その先には「来た来た!」と俺の元へと走ってくる常川田がいる。
「間山がやばいって何があったんだよ」
「それが、他校の女の子が変なのに絡まれて困ってるのを間山が助けに入ったみたいで」
 あそこ、と常川田が指で示した先に野次馬がいる。その隙間から、胸ぐらを掴まれている間山が見えたとき、周りの音が何も聞こえなくなった。
 ガラの悪そうな男が三人。その中でも一番体格がいい男が間山に触れている。
「お前には興味ねえんだよ! 俺はその子と話してるだけで」
「こ、困ってるので。先、行って」
 前半は男に、後半は後ろで不安そうに立っていた二人組の女子に話しかけていた。
 こういうのは苦手なはずなのに、損な役回りばかりやってしまう恋人は、懸命に自分を盾にして誰かを守ろうと必死だった。