夏が明けてしまうと、日々は怒涛のように過ぎていった。朝宮との一件が薄れてくれたのは、文化祭という行事が思っていたよりも忙しくさせてくれたからだろう。
とはいえ、俺がやることは、常川田による貞子プロデュースを全うすることくらいだ。俺は必死に無となり着せ替え人形になり続けた。他人にあれやこれやと指示されることは、今の俺には合っていたらしい。
「間山、短いのと長いのどっちがいい?」
「え……あー、どっちでも」
「おっけー。じゃあ着物の丈はミニにしとくな」
「はっ!? 長いので! すげえ長いのでお願いします!」
こういうことが頻繁に起こるのには、どっと疲れたけど。
そうしてようやく迎えた文化祭当日。
「間山ちょうぜつ可愛い! ちゃんと貞子じゃん」
常川田の全面協力のもと、俺はどうやら可愛い貞子になったらしい。
どこからどう見ても気味悪さだけが抜きんでている気がする。どうせならもう少し女性らしさみたいなものは出なかったんだろうか。ただ黒くて長いウィッグをかぶせられた気はする。
常川田も奮闘していたが、一周回って、こだわりが一切なくなったらしい。この姿を絶賛するくらいには、常川田も疲れがあるのだろう。
「モテモテの貞子になっちゃったな」
「……どのあたりが?」
これでいけると思ったことが証拠だ。もはやネタ枠として用意されているとしか思えないが、どうせ暗いから見えないだろう。
せめてお客さんが少なかったらいいという微かな望みも虚しく、今のところ行列ができている。
一般公開していることもあり、保護者をはじめ、他校からの生徒も多く来場していた。
さっき小さな男の子が俺を見て泣きじゃくっていたけど、あれは怖くて泣いたのか、それとも俺が気持ち悪すぎて泣いていたのか、真意は曖昧なままにしておいた。
午前の部をなんとか貞子としてやりきって、さっさと制服に着替えてしまう。
それにしても朝宮は、どこかに行ったきり姿が見えない。
何してんだろうか。
何気なく二階の廊下の窓から外を眺める。すると中庭に朝宮を見つけた。
「あさみ──」
「朝宮じゃん‼」
派手な服装をした男女グループが、朝宮に声をかけた。
「中学ぶりだよね⁉」
どうやら地元の友達らしい。朝宮を取り囲むようにわいわいと盛り上がっていた。
とはいえ、俺がやることは、常川田による貞子プロデュースを全うすることくらいだ。俺は必死に無となり着せ替え人形になり続けた。他人にあれやこれやと指示されることは、今の俺には合っていたらしい。
「間山、短いのと長いのどっちがいい?」
「え……あー、どっちでも」
「おっけー。じゃあ着物の丈はミニにしとくな」
「はっ!? 長いので! すげえ長いのでお願いします!」
こういうことが頻繁に起こるのには、どっと疲れたけど。
そうしてようやく迎えた文化祭当日。
「間山ちょうぜつ可愛い! ちゃんと貞子じゃん」
常川田の全面協力のもと、俺はどうやら可愛い貞子になったらしい。
どこからどう見ても気味悪さだけが抜きんでている気がする。どうせならもう少し女性らしさみたいなものは出なかったんだろうか。ただ黒くて長いウィッグをかぶせられた気はする。
常川田も奮闘していたが、一周回って、こだわりが一切なくなったらしい。この姿を絶賛するくらいには、常川田も疲れがあるのだろう。
「モテモテの貞子になっちゃったな」
「……どのあたりが?」
これでいけると思ったことが証拠だ。もはやネタ枠として用意されているとしか思えないが、どうせ暗いから見えないだろう。
せめてお客さんが少なかったらいいという微かな望みも虚しく、今のところ行列ができている。
一般公開していることもあり、保護者をはじめ、他校からの生徒も多く来場していた。
さっき小さな男の子が俺を見て泣きじゃくっていたけど、あれは怖くて泣いたのか、それとも俺が気持ち悪すぎて泣いていたのか、真意は曖昧なままにしておいた。
午前の部をなんとか貞子としてやりきって、さっさと制服に着替えてしまう。
それにしても朝宮は、どこかに行ったきり姿が見えない。
何してんだろうか。
何気なく二階の廊下の窓から外を眺める。すると中庭に朝宮を見つけた。
「あさみ──」
「朝宮じゃん‼」
派手な服装をした男女グループが、朝宮に声をかけた。
「中学ぶりだよね⁉」
どうやら地元の友達らしい。朝宮を取り囲むようにわいわいと盛り上がっていた。



