席替えしたら、どうやら後ろの男が俺のこと好きらしい

「そのまま母さんに言うだろ」
「そこは否定しないけど、気になるじゃん。こうちゃんがそこまで凹んでるところなんて見たことなかったし」
「……言わない」
「とかなんとか言って、落ち込んでるのもその好きな人と関係してるんじゃないの?」
 エスパーか。目が合うと、にんまりとした顔で俺を見ていた。
「ついにこうちゃんに春か。まあ今は猛暑なんだけど」
「言わないから」
「意地っ張りだなあ。でもこうちゃんが好きなら、相手の子も好きになってくれるでしょ」
「なんでそう言いきれるんだよ」
「だって朝宮の家系だから」
 忘れていたが、この姉は俺とは違い、顔で評価されることを生き甲斐にしているようなものだった。でも努力家でもあるから、成績もいいし、これまで何かと賞状をもらうぐらいの成績も収めてきた。
 それに社交的だ。誰とでも話せるスキルがあるからか、交友関係も広い。
 もしかしたら、自分は世界中の人間に好かれていると本気で思っているのかもしれない。
「……そんな奴じゃないんだよ」
「え、こうちゃんのこと好きじゃない子?」
 ぱちくりとしたその目に、ん、と嫌々ながら返事をする。
「へえ、そんな子いるんだ。ちょっと意外」
「なんで」
「あ、その子にじゃなくて、こうちゃんにね」
 ますます意味が分からない。なんで俺なんだよ。
「こうちゃんが、自分のこと好きじゃない子に恋してるんだなって」
 分析されるのは本意ではないけど、事実でしかない。
俺は間山が好きだ。
「……好きだけど、困らせたくはない」
「青春! そんなの羨ましすぎる」
「どこが。好きになってもらおうとこっちは必死なのに、間山にはかっこ悪いところばっか見せるし、余裕なくなるし」
「間山かぁ」
「……まあ、うん」
 ついぽろっとこぼしてしまった。姉に名前を知られたところでそこまで問題ではないと思いたい。
「本気なんだね」
 意外そうな目がこちらを見ていた。
「こうちゃんってさ、何かに本気になったこと今までないよね」
 いきなり聞かれて言葉が出なかった。図星だったからだ。
「それこそ誰かを好きになって、本気になるとか今までだったらありえないじゃん。そこまで本気って初めてじゃない?」
 たしかに人をこんなにも好きになったことなんてなかった。
 間山にどう見えたかは分からないけど、俺が間山を諦めきれない限りはアタックを続けていくしかない。
「うるせえよ」
「あ、ちょっといつものこうちゃんに戻った。そしたら明日付き合ってほしいところがあるんだけど」