席替えしたら、どうやら後ろの男が俺のこと好きらしい

「なんでこうなるかな」
 あれから榊と常川田の執念により、見事部屋を特定されて元の部屋へと戻された。でも頭の中は朝宮のことでいっぱいだった。
 朝宮が俺のことをラブではなくライクだったとしても、それでも俺は朝宮に告白したい。
 好きだって気持ちをちゃんと伝えることにこそ、意味があるような気がする。
 とりあえず、もう一度タイミングを見て告白しよう。
 来週には長かった夏休みも終わる。そのときまでに会えるだろうか。
 いや、いっそ学校が始まってからでも遅くはないはずだ。
 そう意気込んだ週末、俺は着ぐるみをかぶり、街中の七夕イベントのアルバイトに来ていた。
 この街の七夕は世間一般的な七月七日にはしておらず、旧暦の七夕を元にしているため、今年は八月後半になる。
 ただ着ぐるみをかぶっていればいいと知り応募したものの、どう考えても季節を間違えた。
真夏にするような仕事ではない。あまりの暑さに身体も思考もやられてしまう。
 着ぐるみは十分から十五分を目安でと言われていることもあり、長時間いなくてもいいのは助かる。こまめに水分補給をしてと言われ、俺は大人しく従う。
「あと五分か」
 つい声に出してしまい、慌てて周囲を確認する。よかった、誰にも聞かれていない。
 最後まで気が抜けないなと思った矢先――。
「え、朝宮?」
 イベントの設営場所から見えたその姿に、目が釘づけになってしまった。
 噴水前の待ち合わせスポットに、朝宮がスマホ片手に立っていた。
 すげえタイミング。週明けとか思ってたけど、ここで会えたのも正直運命でしかないような気がする。
 だとしたら告白するのも今なんじゃないのか?
「あさ……」
「こうちゃーん」
 俺の呼びかけは可愛らしい声でかき消された。見れば、そこにはおそらく大学生らしい美人がいる。
って、よくよく考えれば、俺ってバイト中なんだよな。何声かけようとしてんだ。しかもこんな格好で。
「おまたせッ」
 美人さんは朝宮の片腕にぐるりと巻きつくようにして笑顔を振りまいている。
 なんていうか、圧倒的な美を持つ人だ。艶やかな長い髪も洗礼されたセンスの塊でしかない服装も、どこからどう見ても研ぎ澄まされている。
 朝宮の隣にいることで、よりふたりの存在が際立つようで、あまりにも眩しい。
 異性には興味がないのかと思っていたけど、ちゃんと特別な存在がいたらしい。俺が知らなかっただけだ。勝手に、女の子とは絡まないのかと思っていた。
 美人さんも、ただ綺麗なだけではなく、どこか凛とした佇まいがある。
 朝宮のことだから、顔だけで選んだわけではないのだろう。そんなことは分かっているからこそ、あの人に惹かれたのかと思うと胸がモヤモヤする。
 ふたりは歩きかけたものの、すぐこちらに気づいた。
 やばい、こっちに来る――と思ったのもつかの間、朝宮はすっと俺の前を通り過ぎていった。
 ……そっか、朝宮はここにいるのが俺だって知らないか。
 当たり前すぎて笑ってしまう。