席替えしたら、どうやら後ろの男が俺のこと好きらしい

「この顔も、間山に効果あればよかったのにな」
 自嘲するその横顔に、言葉がすぐに出てこなかった。
 最初は何を考えているか分からなくて、ただ顔がいい奴だと思っていた。
 だけど朝宮と関わるようになり、いいところをたくさん知った。
 冷たそうに見えて実は優しいところがあって。
 冷めているように見えて、嫉妬深いところもある。
何より、どんな時でも、俺の味方でいてくれる。朝宮は本当に俺のことを大事に思ってくれていた。
「……そんなことない」
「え」
「俺はどんな顔でも朝宮だと思ってる」
 いつの日か、朝宮に聞いたことがある。
『俺がどんな奴でも好きになってた?』
 そのときの朝宮は即答した。「どんな間山でも好きだ」と。
 あれは明らかに本心だったはずだ。どんな言葉を並べられるよりも、俺には効果があった。
 俺が好きになったのは朝宮という人そのものだ。
もし中身が別人だったら、それはもう、俺が好きになった朝宮ではない。
 そういうことを、どう伝えれば朝宮の心に届くのだろうか。
 そのとき、スマホが鳴り出した。俺のではなく朝宮のだ。
 けれど一向に出る気配がない。
「朝宮、電話」
「ん」
「俺に気を遣わなくていいから」
「いいよ、どうせ常川田だから」
「でも朝宮のこと探してるんじゃない?」
 朝宮は渋々といった様子で電話に出る。しかもスピーカーで。
『あさみや~お前どこ行ってんだよ』
「カラオケ」
『んなことわかっとるわい!!』
 常川田のツッコミはごもっともだ。
『荷物まで置いていく用事ってなんだよ。戻ってくんの?』
「フロント預けといて」
それだけ伝えたかと思えば電話を切ってしまった。
「え、ちょっ、大丈夫?」
「問題なし」
 どこがだ。問題しかないと思うし、そろそろ常川田たちが部屋を特定する頃でもあるだろう。
 ――それなら、今言うしかないよな。
 朝宮がなんで好きにならなくてもいいなんて言ったのかは分からないけど、そんなことはこの際どうだっていい。
 俺は朝宮が好きなんだから。それだけが全てだと確信したんだから。
「なあ、朝宮。俺――」