手首はまだ掴まれたまま。いつしか強く握られた片手と同じだ。もう痛みはすっかり消えてしまったのに、妙に疼(うず)くような感覚になる。
もう片方に空のグラスを握りながら、何を話そうか、切り出し方を迷っていると、すっと朝宮の手が離れていった。
そのままソファに座り、隣をポンポンと叩いている。座れってことらしい。
大人しく少しだけ距離を空けて座ると朝宮が口を開いた。
「前後で座ることはあっても、隣同士はなかったね」
「え? あ、うん……そうだな」
言われてみれば、隣に朝宮がいるというのは不思議だ。いつもは後ろにいるのをなんとなく気配で察知することしかなかった。
「間山、緊張してんの?」
「するよ、ふたりだし」
「じゃあとりあえずドンペリでも頼む?」
「ここはホストクラブか」
思わず突っ込んでしまった。
「いいね、ホストごっこでもしよ。俺、間山を楽しませる自信ある」
「……なんであんの? ってか男同士で何してんの」
「お兄サンかっこいいね。永久指名しようかな」
「俺がホストかよ!?」
どう考えてもホスト役は朝宮一択だろうよ。俺が通い詰めたいぐらいだ。しかもずっと真顔。こんなこと率先してやるようなタイプでもないのに何考えてんだ。
「……ほんと、ずっと指名できて俺だけのものにできたらいいのに」
「あ、朝宮……?」
俺だけのものって、だから俺はそんなに価値があるような男でもないんだよ。今だって合コンという場から逃げるように出てきてんだから。
「これ、間山の私服?」
「え? あ、そうだけど………?」
朝宮がマジマジと俺を見つめる。
「この前はお兄さんの服借りたって言ってたけど、こっちも似合ってる」
「あ、ありがとう。でも、そんな見られるようなもんじゃないっていうか」
「私服で榊と肩まで組んで。俺はまださせてもらえたことないのに」
だからさ、と朝宮が俺の指先に触れる。
「俺は別の角度からアプローチしようと思って」
「え?」
「こういうことは榊とした?」
「ッ、し、しない」
「じゃあこれも?」
その手が、恋人繋ぎに変わる。
こんなの人生で一度だってしたことはない。俺と違って綺麗な指がしっかりと絡んできて、握ったり、弱まったりを繰り返す。
「こういうことされて、間山はどう思う?」
「……分かんないよ、こんなのしたことないし」
「でも顔赤いよ」
指摘されたら、そうなんだろうなとは思う。
「俺はずっとこうしたかった」
朝宮はずるい。俺の心をかき乱して、落ち着かせてはくれないのだから。
もう片方に空のグラスを握りながら、何を話そうか、切り出し方を迷っていると、すっと朝宮の手が離れていった。
そのままソファに座り、隣をポンポンと叩いている。座れってことらしい。
大人しく少しだけ距離を空けて座ると朝宮が口を開いた。
「前後で座ることはあっても、隣同士はなかったね」
「え? あ、うん……そうだな」
言われてみれば、隣に朝宮がいるというのは不思議だ。いつもは後ろにいるのをなんとなく気配で察知することしかなかった。
「間山、緊張してんの?」
「するよ、ふたりだし」
「じゃあとりあえずドンペリでも頼む?」
「ここはホストクラブか」
思わず突っ込んでしまった。
「いいね、ホストごっこでもしよ。俺、間山を楽しませる自信ある」
「……なんであんの? ってか男同士で何してんの」
「お兄サンかっこいいね。永久指名しようかな」
「俺がホストかよ!?」
どう考えてもホスト役は朝宮一択だろうよ。俺が通い詰めたいぐらいだ。しかもずっと真顔。こんなこと率先してやるようなタイプでもないのに何考えてんだ。
「……ほんと、ずっと指名できて俺だけのものにできたらいいのに」
「あ、朝宮……?」
俺だけのものって、だから俺はそんなに価値があるような男でもないんだよ。今だって合コンという場から逃げるように出てきてんだから。
「これ、間山の私服?」
「え? あ、そうだけど………?」
朝宮がマジマジと俺を見つめる。
「この前はお兄さんの服借りたって言ってたけど、こっちも似合ってる」
「あ、ありがとう。でも、そんな見られるようなもんじゃないっていうか」
「私服で榊と肩まで組んで。俺はまださせてもらえたことないのに」
だからさ、と朝宮が俺の指先に触れる。
「俺は別の角度からアプローチしようと思って」
「え?」
「こういうことは榊とした?」
「ッ、し、しない」
「じゃあこれも?」
その手が、恋人繋ぎに変わる。
こんなの人生で一度だってしたことはない。俺と違って綺麗な指がしっかりと絡んできて、握ったり、弱まったりを繰り返す。
「こういうことされて、間山はどう思う?」
「……分かんないよ、こんなのしたことないし」
「でも顔赤いよ」
指摘されたら、そうなんだろうなとは思う。
「俺はずっとこうしたかった」
朝宮はずるい。俺の心をかき乱して、落ち着かせてはくれないのだから。



