朝宮と仲直りしないまま夏休みも後半に入った。
本当だったら朝宮と数回は会うんじゃないかと思っていたのに、俺の予定はほとんど短気バイトで埋まってしまった。
今日はポスティングだ。ひたすらチラシを配りながら、頭の中には朝宮のことばかりが浮かぶ。
ただでさえ暑さでやられそうなのに。朝宮の一件を思うと、さらにやられそうになる。
あれは俺が悪かったんだろうか。
そう思ったところで、でも、と考えてしまう。
ご当地キャラってなんだよ。どういう目で俺のことを見てたんだよ。
「分かりやすく悩んでるなあ」
とあるマンションのエントランスに入ったところで、中からスマホ片手に榊が現れた。
「え、なんで⁉」
「なんでって、ここ俺が住んでるマンションだし。あ、ここポスティング禁止だから追い出される前に退散したほうがいいよ」
そういえばそんな注意書きがポスト近くの掲示板にあった気がする。やばい、雇い主から口酸っぱく言われていたのに。
回収しようにも、三分の一はもう入れてしまった。
どうしようかと考えあぐねていれば「厳しいのは管理人だけだから大丈夫だって」と榊がフォローしてくれた。
同じ美化委員ではあるものの、ほとんど話すことはなかったのに、朝宮と絡むようになってからは当たり前のように声をかけてくれる。
「助かった、ありがとう」
「別に。んで、それはもう終わんの?」
榊が俺の手元を見る。もう数枚だ。もう少し進んだとこの住宅街でなくなるだろう。
「あと少し」
「夏にご苦労だね。俺も一枚ちょうだい」
チラシは冷凍ケーキのものだ。美味しいよ、と一応宣伝すれば、買いに行くわ、とひとり客をゲットできた。
「んで、何に悩んでんの」
榊は丁寧にチラシを折ると、ポケットにしまった。それを見ながら、答え方に悩む。
悩んでいたけど、それをそのまま榊に話すことはいいのだろうか。なんだかズルをしている気がする。
それにこの様子だと朝宮から何も聞いていないのだろう。朝宮も、周りにあれこれと話すようなタイプじゃない。
「……榊ってさ、今まで何人か彼女いたわけだよね」
「間山と違ってな」
一瞬ツッコもうとしたが、それだけの気力もなく、図星だからうなずく。
「人を好きになるって、どういうことなのかなと思って」
「簡単じゃない? その相手を好きかどうかって」
榊は壁にもたれ、きょとんとした顔で俺を見ていた。心底理解ができないという顔だ。
「……それが分からないっていうか」
「なんで分からないんだよ。好きかどうかで迷うことあるか?」
それは俺も知りたい。
好きなら好きだと、簡単に分かるものだと思っていた。
だけど相手はあの朝宮で、告られて。ついていけないことばかりが起こって、同じところをずっとグルグルしているような気がする。
本当だったら朝宮と数回は会うんじゃないかと思っていたのに、俺の予定はほとんど短気バイトで埋まってしまった。
今日はポスティングだ。ひたすらチラシを配りながら、頭の中には朝宮のことばかりが浮かぶ。
ただでさえ暑さでやられそうなのに。朝宮の一件を思うと、さらにやられそうになる。
あれは俺が悪かったんだろうか。
そう思ったところで、でも、と考えてしまう。
ご当地キャラってなんだよ。どういう目で俺のことを見てたんだよ。
「分かりやすく悩んでるなあ」
とあるマンションのエントランスに入ったところで、中からスマホ片手に榊が現れた。
「え、なんで⁉」
「なんでって、ここ俺が住んでるマンションだし。あ、ここポスティング禁止だから追い出される前に退散したほうがいいよ」
そういえばそんな注意書きがポスト近くの掲示板にあった気がする。やばい、雇い主から口酸っぱく言われていたのに。
回収しようにも、三分の一はもう入れてしまった。
どうしようかと考えあぐねていれば「厳しいのは管理人だけだから大丈夫だって」と榊がフォローしてくれた。
同じ美化委員ではあるものの、ほとんど話すことはなかったのに、朝宮と絡むようになってからは当たり前のように声をかけてくれる。
「助かった、ありがとう」
「別に。んで、それはもう終わんの?」
榊が俺の手元を見る。もう数枚だ。もう少し進んだとこの住宅街でなくなるだろう。
「あと少し」
「夏にご苦労だね。俺も一枚ちょうだい」
チラシは冷凍ケーキのものだ。美味しいよ、と一応宣伝すれば、買いに行くわ、とひとり客をゲットできた。
「んで、何に悩んでんの」
榊は丁寧にチラシを折ると、ポケットにしまった。それを見ながら、答え方に悩む。
悩んでいたけど、それをそのまま榊に話すことはいいのだろうか。なんだかズルをしている気がする。
それにこの様子だと朝宮から何も聞いていないのだろう。朝宮も、周りにあれこれと話すようなタイプじゃない。
「……榊ってさ、今まで何人か彼女いたわけだよね」
「間山と違ってな」
一瞬ツッコもうとしたが、それだけの気力もなく、図星だからうなずく。
「人を好きになるって、どういうことなのかなと思って」
「簡単じゃない? その相手を好きかどうかって」
榊は壁にもたれ、きょとんとした顔で俺を見ていた。心底理解ができないという顔だ。
「……それが分からないっていうか」
「なんで分からないんだよ。好きかどうかで迷うことあるか?」
それは俺も知りたい。
好きなら好きだと、簡単に分かるものだと思っていた。
だけど相手はあの朝宮で、告られて。ついていけないことばかりが起こって、同じところをずっとグルグルしているような気がする。



