クレープ生地は少し変な味がして、それをチョコレートソースで誤魔化しながら食べることになるから。
『そっか。病院は行ってるんやろ?』

『もちろん。治療薬のせいで味覚がおかしなっとるんやから』
ウチがまともに味を感じられるのはチョコレートだけ。

他のものを食べると吐くまではいかなくても気分が悪くなる。
もともとの味を知っているのに違う味がするというのは、脳を混乱させてしまう。
『そや、学校はどう?』

『……うん。まぁまぁ』
ウチは視線を足元に落として答えた。
地面にクレープ生地でも落ちているのか蟻が行列を作っている。
何の気はなしにそれを見つめていると、一匹がウチの運動靴に這い上ってきた。