女子生徒の方がウチに手を振ると、ふたりは何事もなかったかのように教室へ戻って行ってしまった。
ふたりが出てきた屋上のドアを見上げると、ちゃんと鍵がかかっている。

あのふたりは内緒で合鍵を作っては、あそこでふたりきりの時間を過ごしていたんだろう。
彼らからすればウチの方が闖入者だったち違いない。
ウチは手に抱えたチョコレートのお弁当箱をジッと見つめて、嫌な予感に胸が苦しくなったのだった。

☆☆☆

彼らは、屋上にいたことを黙っていてほしいと言った。
だからウチはそれを誰にも言わなかった。

だけど彼らは、ウチが奇妙なお弁当を持ってきてひとりで食べていることを黙っているわけではなかった。