「それに、私はもう生きていけない。あの子が死んだ世界なんて、見たくもない」
誰もなにも言わなかった。

こういうときにかける言葉が見つからないから、こんな重たい雰囲気になってしまうとわかっていたから、私は嫌だったのに。

「じゃあさ、もし弟じゃなかったら?」
沈黙を破ったのはやっぱり白紙だった。
白紙はさっきまでの真面目な雰囲気を消して再びお菓子に手を伸ばしている。

こんなときにまで食べられるなんて、なんて神経の持ち主だろう。
呆れ半分で、それでも沈黙を破ってくれたことに安堵を覚えながら白紙を見つめる。
「わからない」