私たちは別に虐待をされてきたわけじゃない。
ただ、少し過剰に勉強熱心な両親に育てられた。ただそれだけだった。
それも、両親とも医療従事者ともなれば理解の及ぶところだった。
よくある話。
だけど弟はいなくなった。
自分から姿を消した。
『もうやめようよ』
警察官に事情を説明し続けていた両親へ向けて、私はなんの考えもなくそう言っていた。
リビングの大きな窓から庭を見つめるといつの間にか遊ばなくなった子供用のスコップが隅っこのほうに転がっているのが見えた。
お気に入りの赤いスコップだったのに、年を重ねると視界に入っても気にすることすらなくなったもの。
ただ、少し過剰に勉強熱心な両親に育てられた。ただそれだけだった。
それも、両親とも医療従事者ともなれば理解の及ぶところだった。
よくある話。
だけど弟はいなくなった。
自分から姿を消した。
『もうやめようよ』
警察官に事情を説明し続けていた両親へ向けて、私はなんの考えもなくそう言っていた。
リビングの大きな窓から庭を見つめるといつの間にか遊ばなくなった子供用のスコップが隅っこのほうに転がっているのが見えた。
お気に入りの赤いスコップだったのに、年を重ねると視界に入っても気にすることすらなくなったもの。



