『そろそろ勉強したらどうだ?』
弟が好きなテレビバラエティーが始まったばかりというタイミングでお父さんが弟にそう声をかけたことがある。

弟は一瞬眉間にシワをよせ、だけど次には笑顔になって『そうだな』とソファから立ち上がった。

とにかく勉強をして欲しい両親の元で育った弟はいつしかとても賢い子供になっていて、聞き分が良すぎて気持ち悪いくらいになっていた。

『今からテレビ見るんじゃないの?』
普段はそんなこと言わないのに、その時はどうしてか弟にそう声をかけていた。
リビングを出ようとしていた弟が立ち止まり、振り返る。
その目はきょときょとと泳いで戸惑っているのがわかった。