私はそう言って弟の横をすり抜けてトイレに走った。
なんだか弟と一緒にいたくなかった。
同じ家に同じように暮らしている姉弟なのに、ふたりきりになることが息苦しくて仕方なかった。

今ならそれが自分の劣等感からくる感情だってことがわかってる。
だけどそのときはよくわからなくて、とにかくイライラして、弟のことを避けていた。

☆☆☆

そんな生活が続いて私は都内でまぁまぁの高校に入学して、弟も中学生になった。

その頃には私たち姉弟は諦観していて、家の中で顔を合わせてもふたりきりのときには黙って通り過ぎるだけに。食事や家族だんらんを楽しむときだけ姉弟として楽しくふるまう術を身につけていた。