弟に勉強を教えることもできなくなった私は更に弟との距離が遠くなった。

家にいてもひとりで遊ぶ時間が増えて、会話は減って、家族と一緒にいてもなんだかひとりぼっちのような気がしてさみしくなった。

だから、つい弟へ八つ当たりをしてしまったんだ。
『お姉ちゃん』
夜、トイレに行こうと思って部屋を出ると弟が私の部屋の前に立っていた。

右手には小学3年生用のドリルが握りしめられている。
このとき小学2年生だった私にはとうてい解けない問題ばかりが乗っているものだとすぐにわかった。

『なに?』
目の前のいる弟が自分の知っている弟ではないような気がして、警戒しながらそう聞いた。