弟相手なら私でもいろいろと教えてあげることができたから、なんだかちょっと賢くなったような気もした。
『これはキリンさん、こっちはゾウさんだよ』

絵本を開いて指さしながら弟に動物の名前を教えたり、時にはひらがなを教えたりする時間はまだまだ遊びの延長だった。
『キリンさん、ゾウさん』

弟は私の言葉を何度も復唱してまだ文字にならない文字を紙に書いてご満悦そうにしていた。

『ふたりとも、勉強の時間よ』
いつも通り庭先で遊んでいたとき、お母さんにそう言われて姉弟は競うようにしてリビングへ戻った。

手を洗い、さぁ勉強するぞと意気込んだとき『お姉ちゃんは自分の部屋で勉強するか、庭で遊んでいなさい』そう言われて私は動きを止めた。

お母さんからこんなことを言われたのは初めてで、戸惑って視線をうろうろさせる。

『どうして? 私も一緒に勉強する』
『ダメよ。弟の勉強の邪魔になるから』