突然の白紙の強い口調に驚いてグラスから顔を上げる。
白紙は口を引き結んでなにかに耐えるようにテーブルの上で拳を作っていた。
だいだらぼっちとクネクネも驚いている。

「白紙? どないしたん?」
「……別に、なんでもない」

だいだらぼっちからの心配にもそっぽを向いてしまった。
気まずい雰囲気がリビングの中に流れていく。
さっきの発言は白紙にとって地雷だったのかもしれない。

だけど地雷を踏んでしまったことは誰のせいでもない。
私たちは本名すら知らない者同士なんだから。

私はテーブル下の七輪へ視線を落とした。
気まずくなってしまう前にそろそろ点火したほうがいいかもしれない。

「やっぱりさ、私はみんなに聞いてほしいかも」

しばらく続いた沈黙を破ったのはクネクネだった。
「聞いてほしいってなにを?」
嫌な予感がして聞くと「私のことを」と、クネクネが答えた。

やっぱり来た。
明日には死んでいる者同士なのだから、ここでクネクネのことを聞いたってどうにもならない。