白紙は?
白紙はどうなったんだろう?
「白紙は?」

そのままの質問が口をついて出てきた。
医師は首をかしげて「白紙?」と、聞き返してくる。
そうだった。
みんなの本名を私は知らない。

あれだけのことがあったというのに、名前どころかなにひとつとして知らないままだ。
「首を……切った子です」
「あぁ。あの子は残念だったね」

全然残念な様子ではなかったから、言葉の意味が理解できずに首をかしげる。
「生きてるんですか?」
その質問に医師は無言で首を左右に振った。
白紙、死んだんだ。
白紙の美しすぎる最後を思い出す。

あれで良かったんだろうか。
「まぁ、君はこれから先の自分のことだけ考えなさい」