歩きながらも悪態をつき続ける大島くんにだんだんと私の耳は遠くなる。
あれほどうるさかったセミの声も聞こえなくなって、無音の中を歩き続ける。

聞きたくないものを遠ざけて、見て見ぬふりをして、危害を加えられても他人事みたいに接して。
あぁ、こうやって自分の心が閉ざされていくんだ。
ぼんやりとそんなことを考えて歩き続けた。

来た時よりも長く長く感じる道のりを歩いてようやく別荘へ戻ってきた。
「みんな、連れてきたよ」
自分の声でそう言ったとき、ようやく音が戻ってきた。

「おかえり、お疲れ~」
快活な声で出迎えてくれたのは白紙だった。