咄嗟に名前を叫ぶ。
叫んでも無駄だということを知りながら。
『助けて大島くん!』

右手を伸ばしたとき、大島くんはふわりと微笑んだ。
それは学校内でもよく見せる女子に人気のさわやかで可愛らしい笑顔だった。
次の瞬間伸ばしていた私の右手は田中に掴まれていた。
そのまま近くのビルの中へと引き込まれる。

『がんばって』ビルの中に入る寸前、大島くんは笑みを浮かべてそう呟いたのがわかった。