今日の大島くんは会った時からずっと様子がおかしかったし、この田中という男がここにくることを知っていたんだ。

『別の人が、なんだよ』
田中に先を促されるけれど答えられなかった。
今起きている出来事が信じられなくて言葉が喉の奥に引っかかり、出てこない。
『とにかく、私じゃないんです』

『じゃあどうするつもりだよ、借金』
借金?
田中の顔をマジマジと見つめる。

『借金あるんだろ? 昨日言ってたじゃないか。高校生にしては結構な金額だったよな?』
『借金って、それって』
どういうこと?

そう質問しようとしたとき、裏路地へと続く道の角から大島くんがこちらを見ていることに気が付いた。
『大島くん!』