恐る恐る振り向くと、そこにはスーツ姿の見知らぬ男性が立っていた。
男性は40代前半くらいか、髪の毛には多少白いものが混ざりはじめていた。
『誰ですか?』

トートバッグを自分の体の前で抱きしめるようにして男性から身を離す。
『僕、田中だよ。ほら、昨日連絡くれたでしょう?』
口角を上げて笑って見せる田中に見覚えはなかったし、昨日連絡を取った記憶もなかった。

それなのに田中はなれなれしく私の肩に手を置いてきた。
その瞬間ゾワリと全身が泡立ち、脳内に危険信号が鳴り響く。

肩に置かれた手を振り払って逃げようとしたが、その手は思いのほか強い力が入っていてふりほどくことができなかった。
『大島くん!』