まわりをみても面白そうなお店はなく、歩いている人はみんなこの周辺を目的地にしている様子はなく、通り過ぎているだけだ。
古いビルから時折こわもての男の人と派手な女性が組になって出てくるのが見えるだけ。

どう考えてもデートするような場所じゃない。
『ここで、少し人を待っていてほしいんだ』
大島くんの顔はもう青ざめていなかった。
『人を待つってなに? 私が待つの?』

わけがわからずに混乱して質問しても大島くんは答えずに私に背を向けて歩き出した。
『ちょっと、わかるように説明してよ!』
慌ててその背中に声をかけたときだった。

『君が△△ちゃん?』
突然後方から名前を呼ばれてギョッとした。