けれど中学3年生になったある日、その子の様子は明らかに普段とは違うものだった。
『恋愛小説のおすすめはね』
私は彼女の変化に気が付いていながら気が付いていないふりをして、小説の話を持ち出した。

幸いにも恋愛小説も山のように読んでいたから、彼女にオススメできる作品は沢山あった。
だけど彼女は私の席の前で首を左右に振った。
艶やかな漆黒の髪の毛が揺れて、最近急に垢ぬけてきた友人の頬に触れた。

その肌は以前よりもきめ細やかに見え、思春期にできたニキビも消えていた。
『小説の話じゃないよ』
そういわれて心臓がドクンッとはねた。