ふと気がつき、視界に映るものを見てみる。自分の手にはもう何回、何人刺したかわからない包丁がくっついていた。血がナイフだけでなく、自分の右手にも私のことを欲すようにまとわりついている。気持ち悪い。周りにはたくさんの死体が転がっている。夏なのにエアコンをかけてないせいか腐敗臭がしてきた。もうこいつらは動かないと思うと気が楽になった。今更こいつらには何も思わない。刺し続けている時は憎悪とか、怒りとか、お腹の下の方の黒い感情がぐるぐると支配していたはずなのに。終わるとこんなにも静かなものなのか。
これからどうなるんだろう
どうせ後もう少しで帰ってくるだろう。そして捕まえて、責めてくる。問いただしてくる。なんで殺したんだ、どうやって殺したんだ。肩を捕まえ、揺さぶりながら。人を殺した後はどんな感じで処理をするべきなのだろう。カーテンを開ける?冷蔵庫に入れる?山に埋める?正直、今何もしたくない。立つことも、食べ物を食べることもしたくない。目を瞑ってみると何も聞こえないと思いきや、木々が動く音、カラスの鳴き声、名前も分からない虫の音が聞こえてきた。
自分が一番怖かった。人を殺しても何も感じないのも、言われてもないのに人の殺し方、ナイフの使い方がわかってしまったこと。あぁあいつの血が入っているんだろうと思うと死にたくなった。死んでこいつの血を1mlでもこの世に残さずにしよう。でもどこを刺せばいいんだろう。首?頭?足?いや脇かもしれない。
そうか。そんなことも考えずともあいつらと同じように私の体を自分で滅多刺しにすればいいんだ。いつ死ぬのかはわからない。でもそんな最期もいいじゃないか。でも最期に見る景色がこいつらの死体は嫌だな。血が溢れ出していて腐敗が始まっている体を見ながら死にたくはなかった。もっと好きな人の顔とかだったらロマンチックだったな。
もういいや。考えるのもめんどくさくなってきた。死体の処理とか、掃除とかは最初に来た人に任せよう。頑張ってください。ちょっと死体の数は多いですが。適当に処理してもらって大丈夫なので。最初に手を刺そう。右手を勢いよくあげ、左手を刺そうとした。その時だった。
「こんばんは」
遠いところから声が聞こえてきた。恐らく玄関だろう。遠くて誰が来たか分からない。だがたぶんあの人だろう。色々考えてしまっていて扉の開く音が聞こえなかった。まずい。そんなすぐに帰ってくるとは思わなかった。どうしよう。今この現場を見られたら犯人だと絶対気付かれる。そして取り押さえられるだろう。どうする?殺す?今更何人殺しても変わらない。捕まったらどうせ死刑、捕まらなくても自殺する。どっちみち死ぬのだ。自分の手に向いていた刃先を声の方向に向ける。
「誰かいますか?」
古くて重い扉を自分の力でゆっくりと開けてこちらを見てきたのはあいつではなく、いつも遊んでいる同い年の男の子だった。笑顔が綺麗な子だ。仲良くしてくれていつも同じ時間に公園で遊んでいた。砂でお城を作るとか、滑り台、お話をするとかそんなことをしていた。その時だけは自分も自分であることを忘れることができた。そういえば今日がいつもの日だった。時間になっても来なかったからここに来たのか。この子には黒く染まってほしくない。将来を無駄にしてほしくない。
ごめん、今は遊べない。だから早くここから出ていって。
手に持っているナイフを見ながら男の子のことを思って言った。男の子は今どんな顔をしているか分からないが、困った顔をしているのだろう。少しして考えてみると確かにこんな小さな子に死体がたくさん転がっている状況で早く出ていってなんて言っても分かるわけないか。そう思い、やっとナイフから視線を外し男の子の目を見た時だった。
「だったら僕と一緒に逃げようよ」
これが第二の人生の始まりだった。それは暑い、夏の日だった。
これからどうなるんだろう
どうせ後もう少しで帰ってくるだろう。そして捕まえて、責めてくる。問いただしてくる。なんで殺したんだ、どうやって殺したんだ。肩を捕まえ、揺さぶりながら。人を殺した後はどんな感じで処理をするべきなのだろう。カーテンを開ける?冷蔵庫に入れる?山に埋める?正直、今何もしたくない。立つことも、食べ物を食べることもしたくない。目を瞑ってみると何も聞こえないと思いきや、木々が動く音、カラスの鳴き声、名前も分からない虫の音が聞こえてきた。
自分が一番怖かった。人を殺しても何も感じないのも、言われてもないのに人の殺し方、ナイフの使い方がわかってしまったこと。あぁあいつの血が入っているんだろうと思うと死にたくなった。死んでこいつの血を1mlでもこの世に残さずにしよう。でもどこを刺せばいいんだろう。首?頭?足?いや脇かもしれない。
そうか。そんなことも考えずともあいつらと同じように私の体を自分で滅多刺しにすればいいんだ。いつ死ぬのかはわからない。でもそんな最期もいいじゃないか。でも最期に見る景色がこいつらの死体は嫌だな。血が溢れ出していて腐敗が始まっている体を見ながら死にたくはなかった。もっと好きな人の顔とかだったらロマンチックだったな。
もういいや。考えるのもめんどくさくなってきた。死体の処理とか、掃除とかは最初に来た人に任せよう。頑張ってください。ちょっと死体の数は多いですが。適当に処理してもらって大丈夫なので。最初に手を刺そう。右手を勢いよくあげ、左手を刺そうとした。その時だった。
「こんばんは」
遠いところから声が聞こえてきた。恐らく玄関だろう。遠くて誰が来たか分からない。だがたぶんあの人だろう。色々考えてしまっていて扉の開く音が聞こえなかった。まずい。そんなすぐに帰ってくるとは思わなかった。どうしよう。今この現場を見られたら犯人だと絶対気付かれる。そして取り押さえられるだろう。どうする?殺す?今更何人殺しても変わらない。捕まったらどうせ死刑、捕まらなくても自殺する。どっちみち死ぬのだ。自分の手に向いていた刃先を声の方向に向ける。
「誰かいますか?」
古くて重い扉を自分の力でゆっくりと開けてこちらを見てきたのはあいつではなく、いつも遊んでいる同い年の男の子だった。笑顔が綺麗な子だ。仲良くしてくれていつも同じ時間に公園で遊んでいた。砂でお城を作るとか、滑り台、お話をするとかそんなことをしていた。その時だけは自分も自分であることを忘れることができた。そういえば今日がいつもの日だった。時間になっても来なかったからここに来たのか。この子には黒く染まってほしくない。将来を無駄にしてほしくない。
ごめん、今は遊べない。だから早くここから出ていって。
手に持っているナイフを見ながら男の子のことを思って言った。男の子は今どんな顔をしているか分からないが、困った顔をしているのだろう。少しして考えてみると確かにこんな小さな子に死体がたくさん転がっている状況で早く出ていってなんて言っても分かるわけないか。そう思い、やっとナイフから視線を外し男の子の目を見た時だった。
「だったら僕と一緒に逃げようよ」
これが第二の人生の始まりだった。それは暑い、夏の日だった。
