「おや? 変わっていない?」
屋根に着地した天邪鬼は錫杖を手に首を傾げる。確かに見たところ特にどこかが変わったわけではなさそうだ。じゃあ、さっきのは何だったんだ?
敵味方揃って互いに首を傾げる中、 屋根で残党処理をしていたちゅうじんが、様子がおかしいことに気づいたのか、ライトセーバーで鬼の祟核を貫きつつ、俺と天邪鬼の方を振り向いた。
「多田、大丈夫かー?」
「あぁ、灰被っただけだし問題ねぇよ」
そうちゅうじんへ返す。
「私の能力は必ず効果を発揮するはずなんですがねぇ……。まぁ、どちらにせよあなた方を始末すれば良い話です」
天邪鬼は考える素振りを見せたかと思えば、再び屋根を蹴って向かってきた。
俺と天邪鬼は再び錫杖と太刀を交える。攻撃を仕掛けては距離を取り、また打ち込んでは回避されと攻防を繰り返しているうちに俺は違和感を覚える。
さっきよりも体が軽い。こんなの今までなかったのに……。いや、待て。天邪鬼の能力はスペック反転だよな。ってことはだ……。
天邪鬼が錫杖で目を突いてくる。瞬時に横へ逸れ、雷嵐を纏わせた刀身で錫杖を真っ二つに破壊。顔面目掛けて突きを入れる。
と、回避しきれなかった天邪鬼の頬に線が走り、出血。咄嗟に天邪鬼が霊圧を放ち、俺はその場から退く。
「さっきまではそんなもの……!」
「どうやら、お前が灰ぶっかけてくれたおかげで、祓式が宿ったらしい。感謝するぜ! 天邪鬼!」
足に雷嵐を纏わせ、踏み込む。いつもより速度が増す中、袈裟斬りを仕掛ける。
が、杖で払われ、頭目掛けて横一線に振ってきた。それをしゃがんで回避。空いた懐に雷嵐を纏った突きを入れる。
「くっ……!」
まともに天邪鬼は瓦屋根から吹っ飛び、空中に出る。瓦も一緒に吹き飛ぶ中、迷わず屋根を蹴って天邪鬼を追撃。
頭上から刀を振り下ろす瞬間、錫杖が落ちていく天邪鬼の周囲から現れ、こっちへ飛んできた。俺はすぐさま足元に嵐球を出現させ、浮くと同時に雷嵐で錫杖を吹き飛ばす。
「何っ⁉」
天邪鬼は目を見開きながら、落ちていく。かと思えば、錫杖で足場を作り跳躍。錫杖で俺の首を狙ってくる。普通は直撃するところを瞬時に回避。
「これで終いだっ!」
落ちていく天邪鬼へ狙いを定め、再度刀を振り下ろして雷嵐の斬撃を飛ばす。
天邪鬼は錫杖で受けようとするが、粉砕され、斬撃を正面から喰らう。天邪鬼はそのまま鴨川の横を流れる祓川へ落ち、浅い川底へ頭をぶつける。
「これ使え!」
「あぁ!」
残党処理を済ませた夜宵が屋根の上から錫杖を投げてきた。
俺はそれを掴んで祓力と祓式を通し、王子によって浄化済みの祓川に落ちた天邪鬼の祟核目掛けてぶん投げる。雷嵐を纏った錫杖は凄まじい速度で天邪鬼の祟核を貫いた。瞬間、刀に足元の嵐球が消える。
「げっ……。マジかよ……!」
刀に纏っていた雷嵐も消え、俺は鴨川へ落下する。
マズい……! このままじゃ凍死する……!
「多田さん、これ使ってください!」
内心焦る中、ジュリアが屋根から持っていた盾をぶん投げてきた。俺はそれを足場にし、祓力を纏った足で数十メートル先の四条大橋まで跳躍。
と同時に盾が消滅した。四条大橋の欄干がどんどん迫るが、飛距離的に届きそうにない。
ヤバい落ちる……!
そう思ったが、欄干から身を乗り出したちゅうじんの手を掴んで、何とか落ちるのを防ぐ。
「……無事か?」
「あぁ、助かったちゅうじん」
死ぬかと思った……。
溜息を吐きながら安堵していたら、旅館のある先斗町通から憑依を解いた秋葉がこっちに走って来た。
「皆さん大丈夫ですかー? って、先輩、何やってんですか……」
「危うく川へ落ちそうになったんだよ。っと」
軽く身体を前後に降って、逆上がりの要領で橋の欄干へ着地。歩道へ移る。すると、後を追ってきたのか、海希が屋根の上から飛び降りて、こっちに向かってきた。
「来たか海希」
「ほんまは俺が仕留めるつもりやったんやけどな……。兎にも角にもご苦労さん」
欄干に着地して歩道に降りた海希が、つまらないといった表情で話してきた。
「本当、毎度良いとこばっか取りやがって」
葵祭のときも長官戦略会議のときも祇園祭のときも……。
いっつも俺たちが事態を収集し終わった後に犯人逮捕だーって、出張ってくるだから困ったものだ。それに、変われるもんなら変わってほしかったよ。
何で警察職でもない俺たちが祓わにゃならんのか……。
「生憎とそれが仕事やからな。加えてそっちは逮捕する権限持ってへんし。……で、肝心の天邪鬼はどこや?」
「それなら祓川に沈んでるよ。ちゃんと海希が前に言ってた通り、消滅する手前で祓力調整してある」
海希は祓川へ視線を向ける。つられて俺もそっちへ目を向けると、祟核をやられて完全に伸びている天邪鬼の姿があった。
海希はおっかないなという目で俺を見たかと思えば、身体を反転させる。
「ほな、後で色々話聞かせてもらうしな」
「おー」
「ついでや。秋葉も後処理手伝ってな」
「え、何で⁉ 私、そんな権限持ってない……!」
突然の不意打ち発言に驚愕する秋葉。
「ほら行くでー。秋葉はロクに戦おうてないはずやからまだ動けるやろ」
「うわっ、この人民間人を巻き込もうとしてる! 犯罪だー!」
「誰が民間人や。お前は代報者やろがい」
「ぐえっ! 引っ張らないでくださいよぉ」
海希に首根っこを掴まれ、ずるずる引っ張られる秋葉。彼女は首が締まりそうな中、温かい旅館に戻りたいと抗議。俺とちゅうじんはそんな彼らを苦笑交じりに見届け、先に旅館へ帰るのだった。
屋根に着地した天邪鬼は錫杖を手に首を傾げる。確かに見たところ特にどこかが変わったわけではなさそうだ。じゃあ、さっきのは何だったんだ?
敵味方揃って互いに首を傾げる中、 屋根で残党処理をしていたちゅうじんが、様子がおかしいことに気づいたのか、ライトセーバーで鬼の祟核を貫きつつ、俺と天邪鬼の方を振り向いた。
「多田、大丈夫かー?」
「あぁ、灰被っただけだし問題ねぇよ」
そうちゅうじんへ返す。
「私の能力は必ず効果を発揮するはずなんですがねぇ……。まぁ、どちらにせよあなた方を始末すれば良い話です」
天邪鬼は考える素振りを見せたかと思えば、再び屋根を蹴って向かってきた。
俺と天邪鬼は再び錫杖と太刀を交える。攻撃を仕掛けては距離を取り、また打ち込んでは回避されと攻防を繰り返しているうちに俺は違和感を覚える。
さっきよりも体が軽い。こんなの今までなかったのに……。いや、待て。天邪鬼の能力はスペック反転だよな。ってことはだ……。
天邪鬼が錫杖で目を突いてくる。瞬時に横へ逸れ、雷嵐を纏わせた刀身で錫杖を真っ二つに破壊。顔面目掛けて突きを入れる。
と、回避しきれなかった天邪鬼の頬に線が走り、出血。咄嗟に天邪鬼が霊圧を放ち、俺はその場から退く。
「さっきまではそんなもの……!」
「どうやら、お前が灰ぶっかけてくれたおかげで、祓式が宿ったらしい。感謝するぜ! 天邪鬼!」
足に雷嵐を纏わせ、踏み込む。いつもより速度が増す中、袈裟斬りを仕掛ける。
が、杖で払われ、頭目掛けて横一線に振ってきた。それをしゃがんで回避。空いた懐に雷嵐を纏った突きを入れる。
「くっ……!」
まともに天邪鬼は瓦屋根から吹っ飛び、空中に出る。瓦も一緒に吹き飛ぶ中、迷わず屋根を蹴って天邪鬼を追撃。
頭上から刀を振り下ろす瞬間、錫杖が落ちていく天邪鬼の周囲から現れ、こっちへ飛んできた。俺はすぐさま足元に嵐球を出現させ、浮くと同時に雷嵐で錫杖を吹き飛ばす。
「何っ⁉」
天邪鬼は目を見開きながら、落ちていく。かと思えば、錫杖で足場を作り跳躍。錫杖で俺の首を狙ってくる。普通は直撃するところを瞬時に回避。
「これで終いだっ!」
落ちていく天邪鬼へ狙いを定め、再度刀を振り下ろして雷嵐の斬撃を飛ばす。
天邪鬼は錫杖で受けようとするが、粉砕され、斬撃を正面から喰らう。天邪鬼はそのまま鴨川の横を流れる祓川へ落ち、浅い川底へ頭をぶつける。
「これ使え!」
「あぁ!」
残党処理を済ませた夜宵が屋根の上から錫杖を投げてきた。
俺はそれを掴んで祓力と祓式を通し、王子によって浄化済みの祓川に落ちた天邪鬼の祟核目掛けてぶん投げる。雷嵐を纏った錫杖は凄まじい速度で天邪鬼の祟核を貫いた。瞬間、刀に足元の嵐球が消える。
「げっ……。マジかよ……!」
刀に纏っていた雷嵐も消え、俺は鴨川へ落下する。
マズい……! このままじゃ凍死する……!
「多田さん、これ使ってください!」
内心焦る中、ジュリアが屋根から持っていた盾をぶん投げてきた。俺はそれを足場にし、祓力を纏った足で数十メートル先の四条大橋まで跳躍。
と同時に盾が消滅した。四条大橋の欄干がどんどん迫るが、飛距離的に届きそうにない。
ヤバい落ちる……!
そう思ったが、欄干から身を乗り出したちゅうじんの手を掴んで、何とか落ちるのを防ぐ。
「……無事か?」
「あぁ、助かったちゅうじん」
死ぬかと思った……。
溜息を吐きながら安堵していたら、旅館のある先斗町通から憑依を解いた秋葉がこっちに走って来た。
「皆さん大丈夫ですかー? って、先輩、何やってんですか……」
「危うく川へ落ちそうになったんだよ。っと」
軽く身体を前後に降って、逆上がりの要領で橋の欄干へ着地。歩道へ移る。すると、後を追ってきたのか、海希が屋根の上から飛び降りて、こっちに向かってきた。
「来たか海希」
「ほんまは俺が仕留めるつもりやったんやけどな……。兎にも角にもご苦労さん」
欄干に着地して歩道に降りた海希が、つまらないといった表情で話してきた。
「本当、毎度良いとこばっか取りやがって」
葵祭のときも長官戦略会議のときも祇園祭のときも……。
いっつも俺たちが事態を収集し終わった後に犯人逮捕だーって、出張ってくるだから困ったものだ。それに、変われるもんなら変わってほしかったよ。
何で警察職でもない俺たちが祓わにゃならんのか……。
「生憎とそれが仕事やからな。加えてそっちは逮捕する権限持ってへんし。……で、肝心の天邪鬼はどこや?」
「それなら祓川に沈んでるよ。ちゃんと海希が前に言ってた通り、消滅する手前で祓力調整してある」
海希は祓川へ視線を向ける。つられて俺もそっちへ目を向けると、祟核をやられて完全に伸びている天邪鬼の姿があった。
海希はおっかないなという目で俺を見たかと思えば、身体を反転させる。
「ほな、後で色々話聞かせてもらうしな」
「おー」
「ついでや。秋葉も後処理手伝ってな」
「え、何で⁉ 私、そんな権限持ってない……!」
突然の不意打ち発言に驚愕する秋葉。
「ほら行くでー。秋葉はロクに戦おうてないはずやからまだ動けるやろ」
「うわっ、この人民間人を巻き込もうとしてる! 犯罪だー!」
「誰が民間人や。お前は代報者やろがい」
「ぐえっ! 引っ張らないでくださいよぉ」
海希に首根っこを掴まれ、ずるずる引っ張られる秋葉。彼女は首が締まりそうな中、温かい旅館に戻りたいと抗議。俺とちゅうじんはそんな彼らを苦笑交じりに見届け、先に旅館へ帰るのだった。
