「おいおい、マジかよ……」
 
 握っていた太刀がいつの間にかアサルトライフルに変わっており、困惑する。
 
 すると、不敵な笑みを浮かべた天邪鬼が口を開いた。
 
「どうです? 皆さん。ご自身のスペックが反転した気分は」
 
 ふと周囲を見回せば、灰を被った全員の武器が変化していた。
 
 多分、この現象は天邪鬼の性質から来ているのだろう。天邪鬼は元来、あらゆる物事に逆らうことを本質とした祟魔として有名だからな。
 
 内心で今の状況に納得していたら、俺と同じく灰を被ったジュリアが喋り出す。
 
「矛の反対は盾。少々重いですけど、振れないこともないですし、これはこれでかっこいいですね!」
 
 彼女は等身大の盾を軽く持ち上げ、瓦屋根に叩きつけた。
 
 その様子を見るにオタクなところと馬鹿力なところは変わってなさそうだな。今のところ変わったのは武器だけか。

「大鎌から大槌に変わってやがるな。けど、これなら前より振りやすい。いっそ武器を変えるのもありか」
 
 夜宵は手に持った大槌を掲げながら、呟く。
 
 確かにあの大鎌を振り回していたあいつからすれば、大槌は存外振りやすいだろう。
 
「ライフルから太刀に変わってる。けど、懐に仕舞ってあった拳銃は無事だな。ま、振り方は日々、多田の奴を見てるからいけるだろ。とうとう、俺もこれで二刀流デビューか~」
 
 王子もショックを受けるどころか、太刀と拳銃を構えて決めポーズを取っていた。
 
 俺は視線を手元のアサルトライフルへ戻す。
 
 幸いにも銃の扱いは学園時代に習っていたから、慣れれば問題ないだろう。
 
 念の為、腰の鞘を見てみるも、それは変化していないようだ。多分、この中で1番天邪鬼との距離が離れていたからだろう。
 
 俺は今のうちに銃の特性を掴んでおく。
 
「いや、なんでボクだけ何にも変わってないんだ⁉」
 
 そう叫ぶちゅうじんの手には、左右反転した光線銃とライトセーバーが握られていた。
 
 そりゃ元から光線銃にライトセーバー持ちだからな……。変わるも何もないだろ。
 
「スペックが反転したというのに皆さん何ですその反応は……⁉ 普通、嫌がるもんなんじゃないんですか⁉」
 
 不満げにそう漏らす天邪鬼。

 いや、そんなこと言われてもな……。元よりここにいる全員、こういうときの切り替えは早いし、順応速度も速いから武器の1つや2つ変わったところでそんなに気になるもんでもない。
 
「頭領! 加勢しに来やしたぜ!」
 
 ここで、結界内に多数の靄が出現。それと同時に大量の鬼が侵入してきた。
 
 そういえばこの結界、内側からは俺たち以外出られないけど、外からの侵入は防いでないんだったか。こんなことなら秋葉に外からの侵入も防ぐように言っておけば良かったな……。
 
「増援も来たことです。第2ラウンドと行きましょう」

 応援に来た鬼は約100体。この感じだとまだ数は増えるだろう。だが、それはそれだけ天邪鬼の力が強いことを示している。死ぬ気で祓わないと、今後の代報者界隈にも影響が出てくるだろうな。
 
 さっそく向かってくる鬼に対してライフルを構え、祓力で生成した弾丸を連射。すると、弾丸を喰らった鬼は消滅していった。威力も十分。反動もこれぐらいなら大丈夫だろう。
 
 俺は銃の扱いに慣れるため、次なる鬼への攻撃を開始する。
 
「そぉら!」
 
 俺が順調に祓っているその横で、ジュリアも手下の鬼どもを盾で薙ぎ払い、屋根から落としていく。
 
「はははっ! 軽い軽い!」
 
 一方、氷上へ降り立った夜宵は蒼炎を纏わせた大槌で屋根から飛び掛かってくる鬼をモグラ叩きの要領で吹っ飛ばしていた。
 
 もはやゲームだなこりゃ……。

 屋根の上から様子を見つつ、敵が振りかざしてきた刺股を鞘で受け止め、ゼロ距離で祟核に撃ち込む。
 
「邪魔だオラ!」
 
 と、下の遊歩道から王子の声が聞こえてきた。何だと思い、そっちへ視線を向けてみれば、王子は遊歩道に出現した鬼を太刀と拳銃で次々と祓っていく。
 
 流石は天才。もう二刀流に慣れてやがる……。
 
「ジュリア、ここ頼んでも良いか?」
「はい! お任せください!」
「よっと」
 
 やけにハイテンションで盾を振り回しているジュリアにこの場を任せ、俺は細道へと飛び降りる。すると、ちゅうじんが四条通の方から、敵を蹴散らしながらこっちに向かってきていた。