年明けの三が日を何事もなく無事に乗り切った2日後。俺とちゅうじんはキテレツ荘へ帰ろうと諸々の支度をしていた。すると、先に準備を済ませたちゅうじんの元に母さんがやってきた。
「はいこれ。この年末年始手伝ってくれたお礼よ」
「おぉ、お年玉だぞ」
母さんはお年玉袋をちゅうじんに差し出す。受け取ったちゅうじんは嬉しそうに目を見開く。
傍から見た感じ、かなり入っていそうだ。まぁ、色んな意味で過酷な状況を乗り切ったのだから当然っちゃ当然か。ところで――
「――俺の分は?」
「ないわよそんなの」
母さんはワントーン声色を落として答える。
……え、どういうこと? 普通はもらえるもんなんじゃないの?お年玉じゃなくて、普通にこの6日間頑張った給料として。
予想外の発言に戸惑っていると、母さんが続けてこう言った。
「と言いたいところだけど、給料分の仕事はしてもらったからあげるわ。はい」
「あ、ありがとうございます」
あー、びっくりした……。母さんのことだから本当にないのかと思ったけど、あって良かった。
内心、ヒヤヒヤしながらお年玉袋を受け取る。厚さ的にちゅうじんと同じような額だろう。帰ったらヘソクリとして貯金しておくか。
「ここ数日見てて思ったんだが、本当にうーさんは覚えが早いな。是非来年も手伝いに来てほしいもんだよ」
「そっちが良いのならボクはいつでも行くぞ!」
「お、それは有難いな」
ちゅうじんと親父が横で談笑している間に、俺は荷造りを済ませてしまう。
忘れ物は……ないな。よし、それじゃあ帰るとするか。
両方準備が済んだところで、玄関の方へ向かう。と、見送りのために親父と母さん、亜莉朱も後ろから着いてきた。
「それじゃあまたな!」
「えぇ、またね」
「いつでも来てくれてかまわないからな」
ちゅうじんが元気よく別れを告げ、親父と母さんが返事をする。流石にいつでもは行けないだろうけど、時間ができたらたまには顔出すか。
「お兄もうーさんも元気でな」
「お前もちゃんと卒業できるように頑張れよ~」
「一言余計や。ほなね」
「あぁ」
最後に亜莉朱と軽口を叩き合い、俺とちゅうじんは八坂神社を出て、駅の方へ向かう。ここ数日は満杯だった道路も今は落ち着きを取り戻しており、仕事へ向かう社会人もちらほらと見受けられた。
観文省総務課特別支援室は、構成メンバー全員の家が神社だということもあり、他とは1日遅れで仕事が始まる。明日からまた仕事漬けか……。年明けの業務は色々やることが多いから嫌なんだよな。
憂鬱な表情で歩いていたら、ふとちゅうじんが口を開いた。
「多田、キテレツ荘に戻ったらで良いからUFOの修理手伝ってくれないか?」
「んー、特にやることもないし、俺でよければ」
「ありがとな」
ちゅうじんと話している間にも四条大橋を渡り終え、駅へ到着した。
何気にUFOを間近で見るのは春以来だな。内部の構造がどうなってるのとかも気になるし。何はともあれこの大荷物を下ろしてからだな。
俺とちゅうじんは改札を通り抜け、ホームへ階段を降りるのだった。
◇◆◇◆
キテレツ荘に荷物を下ろし、俺とちゅうじんはUFOを隠している裏山へ向かった。険しい山道を歩くこと15分。拓けた場所へ着き、ちゅうじんが光学迷彩を解く。
すると、何もなかったところに巨大なUFOが現れた。初めて見た時は、断片しか見ることができなかったが、こうして全貌を見てみると一軒家並みに大きいことが分かる。
「改めてみると、デカいな……」
「そうか? ボクの機体は偵察用だから本体はこの100倍以上はあるぞ」
マジかよ……。ってことはもうあれだな。宇宙戦艦並みに大きいのか。この偵察機体を収容できるほどだから、きっとそれぐらいはあるのだろう。
スケールのデカさに度肝を抜いていると、ちゅうじんが茂みの中に入っていった。
少しして戻って来たかと思えば、ちゅうじんの周囲にはどこから仕入れてきたのだろうか、鉄筋やアルミニウム合金でできた板材などが念力で浮いていた。
その絵面に圧倒されながらも、ここに来た目的を果たすためにちゅうじんへ話しかける。
「で、俺は何すれば良いんだ?」
「多田にはひとまず、UFOを中心に人払いと防音の結界を貼ってほしいんだぞ」
「了解」
大体、半径100メートル程度もあれば大丈夫だろう。結界の範囲に見切りをつけ、UFOのてっぺんに飛び乗る。ちょうど中心まで着いたところで、印を結んでいく。
すると、100メートル先の徐々に地面から透明な壁が出現。数分もしないうちに壁は形を成し、ドーム状に形成されていった。
「はいこれ。この年末年始手伝ってくれたお礼よ」
「おぉ、お年玉だぞ」
母さんはお年玉袋をちゅうじんに差し出す。受け取ったちゅうじんは嬉しそうに目を見開く。
傍から見た感じ、かなり入っていそうだ。まぁ、色んな意味で過酷な状況を乗り切ったのだから当然っちゃ当然か。ところで――
「――俺の分は?」
「ないわよそんなの」
母さんはワントーン声色を落として答える。
……え、どういうこと? 普通はもらえるもんなんじゃないの?お年玉じゃなくて、普通にこの6日間頑張った給料として。
予想外の発言に戸惑っていると、母さんが続けてこう言った。
「と言いたいところだけど、給料分の仕事はしてもらったからあげるわ。はい」
「あ、ありがとうございます」
あー、びっくりした……。母さんのことだから本当にないのかと思ったけど、あって良かった。
内心、ヒヤヒヤしながらお年玉袋を受け取る。厚さ的にちゅうじんと同じような額だろう。帰ったらヘソクリとして貯金しておくか。
「ここ数日見てて思ったんだが、本当にうーさんは覚えが早いな。是非来年も手伝いに来てほしいもんだよ」
「そっちが良いのならボクはいつでも行くぞ!」
「お、それは有難いな」
ちゅうじんと親父が横で談笑している間に、俺は荷造りを済ませてしまう。
忘れ物は……ないな。よし、それじゃあ帰るとするか。
両方準備が済んだところで、玄関の方へ向かう。と、見送りのために親父と母さん、亜莉朱も後ろから着いてきた。
「それじゃあまたな!」
「えぇ、またね」
「いつでも来てくれてかまわないからな」
ちゅうじんが元気よく別れを告げ、親父と母さんが返事をする。流石にいつでもは行けないだろうけど、時間ができたらたまには顔出すか。
「お兄もうーさんも元気でな」
「お前もちゃんと卒業できるように頑張れよ~」
「一言余計や。ほなね」
「あぁ」
最後に亜莉朱と軽口を叩き合い、俺とちゅうじんは八坂神社を出て、駅の方へ向かう。ここ数日は満杯だった道路も今は落ち着きを取り戻しており、仕事へ向かう社会人もちらほらと見受けられた。
観文省総務課特別支援室は、構成メンバー全員の家が神社だということもあり、他とは1日遅れで仕事が始まる。明日からまた仕事漬けか……。年明けの業務は色々やることが多いから嫌なんだよな。
憂鬱な表情で歩いていたら、ふとちゅうじんが口を開いた。
「多田、キテレツ荘に戻ったらで良いからUFOの修理手伝ってくれないか?」
「んー、特にやることもないし、俺でよければ」
「ありがとな」
ちゅうじんと話している間にも四条大橋を渡り終え、駅へ到着した。
何気にUFOを間近で見るのは春以来だな。内部の構造がどうなってるのとかも気になるし。何はともあれこの大荷物を下ろしてからだな。
俺とちゅうじんは改札を通り抜け、ホームへ階段を降りるのだった。
◇◆◇◆
キテレツ荘に荷物を下ろし、俺とちゅうじんはUFOを隠している裏山へ向かった。険しい山道を歩くこと15分。拓けた場所へ着き、ちゅうじんが光学迷彩を解く。
すると、何もなかったところに巨大なUFOが現れた。初めて見た時は、断片しか見ることができなかったが、こうして全貌を見てみると一軒家並みに大きいことが分かる。
「改めてみると、デカいな……」
「そうか? ボクの機体は偵察用だから本体はこの100倍以上はあるぞ」
マジかよ……。ってことはもうあれだな。宇宙戦艦並みに大きいのか。この偵察機体を収容できるほどだから、きっとそれぐらいはあるのだろう。
スケールのデカさに度肝を抜いていると、ちゅうじんが茂みの中に入っていった。
少しして戻って来たかと思えば、ちゅうじんの周囲にはどこから仕入れてきたのだろうか、鉄筋やアルミニウム合金でできた板材などが念力で浮いていた。
その絵面に圧倒されながらも、ここに来た目的を果たすためにちゅうじんへ話しかける。
「で、俺は何すれば良いんだ?」
「多田にはひとまず、UFOを中心に人払いと防音の結界を貼ってほしいんだぞ」
「了解」
大体、半径100メートル程度もあれば大丈夫だろう。結界の範囲に見切りをつけ、UFOのてっぺんに飛び乗る。ちょうど中心まで着いたところで、印を結んでいく。
すると、100メートル先の徐々に地面から透明な壁が出現。数分もしないうちに壁は形を成し、ドーム状に形成されていった。
