宇宙人が家にやってきた!~社畜祓魔師の家に墜落したUFOに乗っていたのは、超絶破天荒な宇宙人でした~

 周囲に祟魔の気配を感じ、歩みを止める。すると、茂みの中から角の生えた祟魔が出てきた。
 
「……鬼? こんなところにいたっけ?」
「去年来た時はそんなん居らんかったはずやけどな……」
 
 俺の問いに亜莉朱が呟く。
 
 やっぱりそうだよな。それにこの気配、前にどっかで感じたような気がしてならない。
 
「どっちにせよ、祓ったら全部解決だろ。早く片付けようぜ」
「やな。ここ最近、神社が忙しゅうて祓えてへんかったから、ちょうどええわ」
 
 ちゅうじんと亜莉朱はそれぞれ鬼に向かって駆け出す。
 
 色々気にはなるが、今は祓うことが先だ。

 祓力で足を強化。腰に帯びていた太刀を抜き、刀身にも祓力を纏わせて反撃の隙を与えぬまま一気に鬼の胴体を貫く。

 と、後ろにいた鬼が強靭な腕を振りかぶってきた。俺は即座に刀を抜き、しゃがんで回避。ついで雷雨を纏った鎖が背後の鬼の胴体を直撃した。
 
 横目で鎖の飛んできた方向を確認すれば、亜莉朱が鎖の穂先についた刃を引き抜く。すると、前後にいた鬼が消滅。俺はすぐさま地面を蹴って次の祟魔の元へ刃を振り下ろす。
 
 その一方で、亜莉朱は足元に祓式である嵐球を発生させて宙に浮き、俺の横を通過。器用に木々をすり抜けて、立ちはだかる祟魔を蹂躙していく。
 
 ちゅうじんも体術と光線銃を使い分けながら、順調に祟魔を祓っていっている。

 討伐開始から数分が経過した頃、敵と交戦中のちゅうじんが念話を飛ばしてきた。
 
『なぁ、ちょっと強くないか?』
『あぁ。それに気づいたんだが、前にやり合った赤鬼と青鬼に似たような気配がする』
『え、マジかよ』
 
 湧いて出てくる敵を斬りながら俺が告げれば、ちゅうじんは驚いたようにこっちを見てきた。

 と、同じく絶賛交戦中の亜莉朱が念話に混ざってくる。
 
『そういえば学園の方からも注意するよう言われとったな。鬼面をつけた着物姿の人物を見つけ次第、すぐに日輪の方に連絡入れるようにって。もしかしてそれ?』
『そうだ。観文省の方には人に化けた鬼が潜んでいたけどな』
『え、何それ怖っ。やっぱり公務員にはなりたないわ』
 
 亜莉朱が嫌悪するような声色でそう言い放った。
 
 まさか学園の方にも行き届いてたとは……。

 多分、それだけ日輪が警戒しているのだろう。にしても、同様の気配がするということは、もしかしたら黒幕がこの近くに居るのかもしれん。念の為注意を払っておくに越したことはない。
 
 俺は祓う傍ら、念話で山中にいる代報者たちへ警戒するよう伝達する。

 と、これでもかと周囲にいた祟魔の姿が見えなくなった。どうやら俺が念話を飛ばしている間に亜莉朱とちゅうじんが祓ってしまったようだ。
 
 2人共手慣れたもんだな……。亜莉朱はほんの3年前まで1体祓うだけで苦戦してたのにな。
 
 ちゅうじんもちゅうじんで、地球に来てまだ1年も経ってないのに瞬く間に祓えるようになりやがって。全く持って成長速度というか順応速度が桁違いすぎる。
 
 心の中で密かに感激していたら、光線銃を下ろしたちゅうじんがこっちに歩いてきた。

「この場はこんなもんか?」
「周囲に気配は感じられへんし、そうやろ。ほな、次行こか」
「そうだな」

 その後も山中を移動しながら遭遇する祟魔を祓うこと2時間。途中、結界が強化されて浄化スピードが上がり、他のポイントに居た代報者たちから次々と討伐完了の報告が上がる。
 
 そんな中、山中に結界を貼った代報者から残り7体との連絡を受ける。気づけば年越しまで後、10分。どうやら目の前にいる祟魔たちで最後のようだ。
 
「ラストスパートだ。気ぃ抜くなよ」
「言われんでも!」
「勿論だぞ」

 周囲にいた鬼たちが一斉に飛び掛かってきた。ちゅうじんが先陣を切って2体同時に相手取り、ビームで鬼の眉間を貫く。血が飛び散る中、ちゅうじんはもう1体の鬼の腹に蹴りを入れる。

 と、鬼は大木目掛けて吹っ飛んでいき、ちゅうじんが止めを刺すように、第2射、第3射と撃ち込んだ。これにより2体の鬼は消滅。亜莉朱も鎖を巧みに操り、まとめて3体を撃破。
 
 斯く言う俺も、掴みかかろうとしてきた鬼の腕を捕え、刀身で祟魔の核となる祟核(すいかく)を突く。残るは1体。

 だが、恐れをなしたのかその場から逃げ出した。本来なら逃がしてやりたいところだがそうもいかない。俺は地面を蹴り上げ、鬼に急接近。霊眼で祟核の位置を捉え、そのまま平突きで仕留める。
 
 すると、鬼は呻き声を上げながら消滅していった。

『結界全域に潜む祟魔の掃討が完了した。代報者各人は随時神社の方へ戻ってくれ』
 
 念話で退去するように指示を出しつつ、刀を振り払い、邪気を飛ばして鞘に納める。
 
「これで年末の大掃除も終わったな」
「疲れたぞ。早く帰って甘酒飲もうぜ」
「やな」
 
 一足先に武器を仕舞ったちゅうじんと亜莉朱は、来た道を戻ろうと足を進めた。俺は周囲を軽く見渡して打ち漏らしがないか確認する。
 
 結局、鬼面の人物は現れなかったか。確かに葵祭と祇園祭の時に見た鬼面の祟痕(すいこん)と同じような気配がしたんだけど……。

 ひとまず、今回の件は海希とSSのみんなに報告しておくべきだろう。
 
 
「お兄、何してるん? はよせんと置いてくで~」
「あー、今行く」
 
 俺はもう一度周囲に祟魔がいないことを確認してから、ちゅうじんと亜莉朱の元へ駆け寄る。

 と、遠くの方から年明けを知らせる除夜の鐘の音が聞こえてくる。今年も無事に年が越せて良かった。そう思ってると、前を歩いていたちゅうじんのお腹からきゅるきゅると音が鳴った。

「あ、ヤバい……」
「……神社着くまでは耐えろよ」
「わ、分かってるぞ……」
 
 まさかのここに来て母さんの料理が効果を発揮したらしい。
 
 戦闘中じゃなかっただけまだマシか……。
 
 俺たちは急ぎ足で山を下りるのだった。